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『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』~自信を持てないジェネレーション~

村上 春樹
07 /18 2013
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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お暑い日が続きます。
連日の猛暑で、読書するのもダレがちですが、日頃の習慣。毎夜、本の世界を楽しんでおります。

しばらく前に話題になった村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。
思ってたよりも早く図書館に入ったので、借りてみました。

ここ最近、ハリーポッターを読み続け、魔法とファンタジーの世界にどっぷり浸かっていたので、この多崎つくるはなかなか重めに感じました。
ハリーが空想ファンタジーで現実を一時忘れられるとすれば多崎つくるは人間の内面に向き合わされながら現実を直視させられる感じでしょうか。

何冊か村上春樹作品を読んできましたが、この本はなんだか小難しい印象を受けます。
ストーリーというよりも、キャラクターたちがなんだか小難しい。
『1Q84』にも似た印象をうけましたが、あれはストーリーが長かったのでまだ受け入れ易かったのですが。
多崎つくるにおいては、そのキャラクターの小難しさ(考え方やセリフまわし)がちょいと気になりました。
今まで読んだ村上春樹作品のキャラクターたちも小難しいっちゃ小難しいのですが、それを感じさせないさらりとした感があった。
それだけに、本作ではそれがなかったのが若干残念でした。

度々、他の村上作品と比較してもうしわけありませんが、本作の主人公はさほど複雑な境遇におかれていません。
(他の作品は、なかなかありえない境遇(シチュエーション、生い立ち)に身を置いていたので)
わりと裕福な身の上で、順風満帆な成長の中での、人間関係によるつまずき。そしてそれに伴う人間形成。
ある意味で、とても普通でリアル。一般的な大人が大なり小なり経験したであろう、見に覚えがあるであろう、そんな生い立ち。
そして、それに伴う、大人になってから抱える、形の掴みづらい劣等感のようなもの、あるいは傷。
それを抱えながら生きている主人公に対し、好き嫌いはあるでしょうが、なんとなく自己投影してしまうのではないでしょうか。

多崎つくるでは学生時代の出来事が、キーとなってきます。
なんだか読んでいるうちに『桐島、部活やめるってよ』にも通じる、ポジショニングやヒエラルキーについて感じさせられたり。。。
本作の中で主人公がいた場所は、安定はしているのだけれども、仲間内から要求されるポジションのようなものがあったり。
安定を保つために、ポジションを期待される。そこから外れると、全てが崩壊する、そんな危うさ。
充実していながらも、気づいたときには息苦しさを感じずにはいられないような、そんな学生時代の居場所。
ちょいと離れて見てみると、いかに柔軟性のないものかと、悲しくなるような関係性の中で、主人公は形成し壊れていきます。

私の場合も、それなりに、自己投影してしまい、面白くない気持ちを抱きつつも、主人公の心持ちにちょいと共感すら覚えました。
そう、面白くないんですよ。ストーリーとかじゃなくて、心持ちの問題。
なんだか、見たくない部分を整理して提供されているような感じもあって。
どちらかといえば、主人公にとって蓋しておきたい事柄が、周りの影響もあって、次々と引っ張り出されてくる。
無視しておくこともできるけど、それには強烈な吸引力がある。蓋を開けてしまったら、もうそれをほうっておくのも気分が悪い。
おそらく、誰にでもそういう部分ってあるんだと思います。真っ向から見据えることができる人もいれば、それが嫌な人もいる。
そういう人にとって、この本は、どこかで面白くない感情を抱かせるモノを持っていると思います。

主人公は、外部的圧力(?)によってそれを見据えることになっていくのですが・・・
この多崎つくるの場合にもどうにもすっきりしない幕切れでした。
他の作品にも言えることですが、最後の一口で喉に魚の骨がつっかえた感じ。
飲み込もうにも飲み込めない。
本作に関しては、微妙な感覚が引っかかって終了。ここで終わりっちゃ終われるんだけど、でも何か。。。
掴めそうでつかめない、もどかしい気持ち悪さ。なんともいえない質感。
そういう部分が村上春樹の味であり、魅力なのでしょう。もちろん好き嫌いはあるでしょうが。


本書の中で気になった言葉。
僕にはたぶん自分というものがないからだよ。これという個性もなければ、鮮やかな色彩もない。こちらから差し出せるものは何ひとつ持ちあわせていない。そのことがずっと昔から僕の抱えていた問題だった。入れ物としてはある程度形をなしているかもしれないけど、その中には内容と呼べるものはろくすっぽない。」

たしかにこういう不安を持つ人もいるでしょう。これに対して、老子の

粘土をこねくって、ひとつの器(うつわ)をつくるんだが、器は、かならず、中がくられて空(うつろ)になっている。この空(うつろ)の部分があってはじめて、器は役に立つ。中がつまっていたら、何の役にも立ちやしない。
(中略)これで分かるように私たちは物が役立つとおもうけれどじつは物の内側の、何もない虚(きょ)のスペースこそ、本当に役に立っているのだ
。(BSジャパンー道~タオ・老子~より転載)」
を思いうかべました。私は空は空なりの魅力や用があると思います。


関連記事
『ノルウェイの森(上)』~物悲しい青春~
『1Q84 BOOK 1』~まずは1から~

コメント

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相互リンクお願いしたいのですが。

図書館男子様

はじめまして。

メール先が不明だったためコメント欄で失礼します。
読後削除して下さい。

「村上春樹コレクターの著作をめぐる冒険」
管理人の「村上春樹の本棚」です。
当方、村上春樹中毒者です。
図書館男子様の村上春樹記事参考になりました。

勝手なお願いですが、当方ブログと
相互リンクをお願いできないでしょうか。
ご検討をお願いします。

なお勝手に既に当方ブログからリンクを貼らせていただいております。






Re: 相互リンクお願いしたいのですが。

村上春樹の本棚の本棚様

初めまして、図書館男子と申します。
了解いたしました、こちらでもリンクさせて頂きますので今後ともよろしくお願い致します。

相互リンクありがとうございました。

図書館男子様

早速の手配ありがとうございました。
こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。

村上春樹の本棚

図書館男子

図書館好きの管理人が、様々なジャンルの本を紹介しています。特にお気に入りなのは、江戸、落語、アート、デザイン系の本。相互リンク随時募集中!

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