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『南アフリカらしい時間』~差別を乗り越えた国~

南アフリカらしい時間南アフリカらしい時間
(2010/05)
植田 智加子

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図書館のエッセイコーナーで見つけた本。

南アフリカらしい時間というタイトルに、広大な大陸のゆったりした時の流れをイメージして手に取りました。



鍼灸師を生業とする著者の今までを綴った本。

彼女は一人アフリカの地で子どもを産み育てたシングルマザーでもあります。

子育てを通して、南アフリカの生活を伝えたり、またマンデラ大統領のおかかえ鍼灸師でもあったことから、普段知ることのない、その国の実状が見えてきます。



アパルトヘイトの問題。

なんとなく、学生のころ社会の時間でならったもの。

それが差別に関係するということはぼんやりと覚えていたのですが、本書にはそれがために戦い続けた多くの人がでてきました。



差別、特に人種差別とは何か。

日本にもそれはあるのだけれど、なかなか実感し辛いその問題。

正直、軽いかと思って手に取った本でしたが、かなり重いテーマも潜んでいます。



著者が南アフリカの生活中、あるパーティーで“スズキ”と呼ばれた体験が載っていました。

名前が覚えにくい、日本人だからスズキ(自動車とかで覚えたのでしょう)でいいだろうといった具合に。

その相手は、他のどんなややこしい名前の人にでもきちんと名前を言っていたのに、著者にだけは“スズキ”で通したそうです。

過去、南アフリカにすんでいた黒人の人々は一括りの呼び名をされていたそう。

当初、著者はそこにおける差別の度合いが分からなかったそうですが、自身の体験によりその辛さが分かったとか。



アパルトヘイト問題で、数多くの人が戦ったそうです。

それは家族のため、民族のためなど色々あったでしょうが、一番の理由は尊厳を守るためのような気がします。

人は、衣食住のみでは生きられない。

そこに自由というのは尊厳をともなってこそのもの、そんな気がします。



本書にひそむテーマは重いですが、全体の文体は綺麗でやわらか。

南アフリカで、生き、暮らす人々の素朴な日常をもゆったりと描いています。

シングルマザーである著者は、そこで暮らす多くの人々の人情に支えられて子育てができたよう。

いろんなことを経験してきたからこそ。

国、人種を超えても変わらない人情の良さも知ることができました。
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『旅の素―さわこのこわさ』~近場から海外まで~

旅の素―さわこのこわさ旅の素―さわこのこわさ
(1999/06)
阿川 佐和子

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10月に入りました。
今日は、今年に入って初栗ご飯食べましたよ。美味しかった~
涼しかったり、一転蒸し暑かったりと、なかなか気候は定まりませんが、確実に秋と冬が近づいています。
味覚とお腹でその気配を感じた夕飯でした。

さて、たけしのtvタックルでお馴染み阿川佐和子さんの著書。
今回は旅の本です。

旅のエッセイ割と好きです。
様々な国や地方のことがその著者の目を通して、伝わってくる。なんだか行って楽しんだ気になれるお手軽感がいいです。
旅のエッセイって物によって重かったり、軽かったりとありますが、阿川さんのはかなり軽め。
国内のちょっとした旅行から、海外の珍道中まで。
肩肘張らず、かといってゆるすぎない阿川節で、ほっこりとした読み応えでした。

秋の入口にちょうどいいような本。
頭も使わないし、様々な旅行地に思いをはせて楽しめるし。
駅弁美味しそうだなとか、海外では気が抜けないなとか、こんなことに気をつけなければいけないのかぁ、、、とか。
一日仕事でみっちり使用した頭に、ちょうどいい柔軟体操といった感じでしょうか。
秋の夜の心地よさとあいまって、「読書の秋を楽しむか~」ってきっかけになるような、気楽な面白さです。

旅エッセイって、けっこうコンセプト的なものが決まっているものが多いですが、この本はあんましそんな感じなし。
とにかく、ころころ訪問地が変わる。日本から世界までころころと。
そこが気楽でいいのかもしれません。ひとつの地域をみっちりというのも、覚えるだけで頭を使いますし。
秋、本でも読んでみるかぁって人はこれぐらいの軽いのから始めてみては?

『美しい気配』~オブジェクトがまとうモノ~

美しい気配美しい気配
(2012/01/12)
前田義子

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写真とともに、それにまつわる文章。
よくあるタイプの本ですが、その写真がとても綺麗。
華やかな感じではないのですが、愛おしむような心配りが感じられる写真。
被写体は、小さな仏像であったり、香炉であったりとちょっと上品な身の回りの道具といったもの。
丁寧に作られたそれらは、気品ある空気をまとっています。
それが美しい気配でしょうか。

写真がとても素敵で、タイトルの美しい気配というのが、それからよく伝わってきます。
現代的な生活において、プラスチック製品を代表とする大量生産物に囲まれているとなかなか感じられないモノ。
作り手の様々な気持ちや思い、それは使い手の人を思いやる気持ちがこもった小さな品たち。

自分の生活を見渡してみると、随分そういった細やかな気持ちがこもったものが少ないなと思いました。
ものを大事にしなくなったというか、自分自身そういうものに気を配る姿勢をおろそかにしているな、と。

家に帰ってから、寝るまで。休日ともなれば、一日中のときも。
何時間あるかわかりませんが、年間で考えると家にいる時間は相当あるはずです。
そうした時間の中で、たいして重要でもない、飽きれば壊れれば買い換えればいいやといった程度のものに囲まれているとどうなるのだろうか。
そう考えたとき、なんだかもったいない気持ちになりました。

一つでも、二つでも。
本書で紹介されているような、美しい気配をまとったものを身の回りにおけば、自分の生活に変化がおとづれるかも知れない。
特に、落ち着きであるとかリラックスといった、心地よさに関する部分では良い効果が現れるはずです。

目に触れる部分、長く接する場所などに。
今後、自分に良い影響を与えてくれるような、そんな美しい気配をまとったものを取り入れる生活にシフトしていきたいです。


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『ザ・万字固め』~万城目学と東電株~

ザ・万字固めザ・万字固め
(2013/02/09)
万城目 学

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お盆です。
猛暑というより、酷暑が続き外に出るのが辛い。
ジリジリとお日様がさす日中はできるだけ家の中でのんびりしたいものです。
気分転換に、ブログ背景を変えてみました。

『鴨川ホルモー』などで有名な万城目学さんのエッセイ。
万城目さんのエッセイはのんびり読むのにぴったりなゆるさ。
色々と考察はあるのだけれど、その着地点はふわふわしたところに。
硬すぎず緩すぎず、ちょうどいい具合の半熟卵のごとき味わいがクセになります。

最近、とにかく暑かったし、頭もあんまり使いたくないので、ポケーっと読ませていただきました。
今回も、はずれなくゆるい。
全体に万城目学の飾らない人柄がにじみ出ているよう。
一つ一つの出来事に言及はすれども、これといった確固たる着地点につく前に次の話に飛んでいく(私にはそう感じます)。
話も身近なことを話していたかと思えば、海外の広大な大地になったりと、そのコントラスでだれることはなく、読み勧められました。

この『ザ・万時固め』で一番興味をそそられたのが東電株の話。
万城目さんは東電株を1000万円分近く保有していたそうで、あの東北大震災ののち、大変な目にあったそう。
震災直後、テレビから伝わってくる天災の数々。そののち明らかになる、原発の異変。
東京電力や内閣が代わる代わる原発の現状を伝える中、東電の株は暴落し続けたそうです。

東電株を持ってない者にとっては、原発の行方が第一の関心事ですが、株保有者にとってはそれだけで収まらない。
一夜にして莫大な額の損害を被った株保有者たち。
そして、その後の東京電力株主総会。
万城目さんは開催直前に株を全て売ったそうですが、参加の権利が届いたので現場に向かったそうです。

歴史的な人災の当事者東京電力とその株主たち。
株主という主観にたった万城目さんの目から見た株主総会の様子。
文章から会場の息詰まり感、東電側と株主とのすれ違い、なによりも、打つ手なしの諦めムードなど。。。
ほんわかした万城目さんのエッセイでは珍しい、シビアな現実が見えてきました。
これまで、東電株主がどんな気持ちだったのかなんて考えたこともなかったので、複雑な気持ちに。
そういう、震災被害の形もあったのだと、勉強になりました。



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『歩く旅の本 伊勢から熊野まで』~熊野古道女子一人旅!~

歩く旅の本 伊勢から熊野まで歩く旅の本 伊勢から熊野まで
(2013/04/23)
福元ひろこ

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世界遺産、熊野古道。
古の時代から多くの巡礼者が辿った道。
近年でも、世界遺産登録をうけて、沢山の人が足を運んでいます。

本書では、この熊野古道の伊勢路(伊勢から熊野までの古道)走破の旅の記録です。
著者、福元ひろこさんの一人旅。
交通機関が発達した現代において、「歩く」とはどういうことなのか。

今までにも、熊野古道の本というのは色々あったのですが、この本ほど読んでいて楽しい本はありませんでした。
今までの古道本というと、○×大学教授監修とか、旅行雑誌みたいなのとか、あんまり読み物として楽しくないものばかり。
しかし、この本だけは夢中で読んでしまいました。

一日一日の記録をとても素直な文章で書いていて、どこかブログのような読みやすさ。
伊勢路の難所にさしかかったときの心細さや、苦しい中で出会った人の優しさ。
そういうものが包み隠さず素直に書かれていて、共感しながら読みすすめられました。

熊野古道伊勢路の特徴は、平坦ではないということ。
峠越えの連続、そして山と海のコントラストが濃いということ。
もはや歩いて峠越えなど昔話の世界。でもそれが今でも息づいているんです。
現代人がそのようなものを体験したとき、率直にどうなるのか。
福元さんが体験する驚きや波乱万丈の連続にぐいぐい引き込まれていきます。

女性の一人旅。等身大の一人旅。
建前なく、現代の熊野古道歩きの素の姿が見えてきます。
古の時代から比べると、歩く人もめっきり減ったはずですし、それを迎え入れる体制も消えつつあるのが現状。
正直、不便なことも多いでしょう(伊勢路を走破しようとすると、宿泊関係が難しいみたい。)
そういう、物質的な不便さはあるものの、古道客に対する地元民の優しさや温かさのDNAは受け継がれていることがわかります。
福元さんの旅からは、今でも人の優しさや思いによって、古道が息づいているってことがわかりました。
歩く、巡礼する、それって人と人とが繋がり合ってこそ、成立するもんなんだなって。

この本を読み終わったとき、とてつもなく「歩いて旅したい!」という思いにかられました。
おそらく、読み終えた人の多くがこの思いを抱くことでしょう。
もちろん、大変そうだししんどいことも多そう。だけれどもそれ以上に得るもののほうが大きそう。
旅行とは違う、”歩く旅”の魅力に大きな憧れを抱きました。

本書には、歩く旅に必要なものの紹介も行われています。また、伊勢路完全版マップも付録で付いており、これさえあれば、いつでも熊野古道伊勢路の旅へ出かけられるという寸法です。
熊野古道に、歩く旅に興味のある方には、是非おすすめしたい一冊です。



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