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『銀齢の果て (新潮文庫)』~R70バトルロイヤル~

筒井 康隆
11 /07 2012
銀齢の果て (新潮文庫)銀齢の果て (新潮文庫)
(2008/07/29)
筒井 康隆

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書いている筒井康隆も、よく考えりゃ爺様

増大した老齢人口調節のため、ついに政府は70歳以上の国民に殺し合いさせる「老人相互処刑制度」を開始した!和菓子司の隠居、宇谷九一郎の住む宮脇町には、もと自衛官、プロレスラー、好色な神父など「強敵」が犇めいている。刃物と弾丸が飛び交い、命乞いと殺し合いの饗宴が続く。長生きは悪なのか?恐怖と哄笑のうちに現代の「禁断の問い」を投げかける、老人文学の金字塔。(「BOOK」データベースより)


●簡単には突き放せない

筒井康隆が描く高年齢版バトルロワイヤル。
不条理な政策によって、殺し合いを余儀なくされたお年寄りたちの物語。

これは筒井康隆じゃなかったら、良識を疑うような内容。
とにかく、どっかがブッ飛んでいて、それでいて体をなしているのがすごいです。
下手すりゃ、すごく悪趣味におわる世界観なのに、あまりそれを感じさせない。
それどころか、社会的、文化的なものまで感じさせる異色。

内容を簡単に言えば『バトルロワイヤル』の老年バージョンといった感じ。
ただ、年齢を引き上げただけで、これほど内容が変わるのかと。。。
(そこはやはり、書き手である筒井康隆の腕でしょう)

荒唐無稽なはずなのに、どこかそう言い切れない強烈な毒を含んでいます。
”老人達を養うには保険金や福祉など莫大な金がかかる”という一点が、架空の話と突き放なせない、ひっかかりを投げかけてきます。

ブラックでコミカル。テンポのよさと誇張表現で、とんでもない世界の中にふつふつと湧く笑い。
でも消化のしにくい、ヘビーなもの。

物語の中で、老人達はその地区の最後の一人になるまで一月の間殺し合いを続けます。
その間、医療機関や診察など一切受けることができない状態。
自然、高齢者の中には持病を悪化させたりとかで死んでしまうものもいるありさま。

事実ならば笑えるようなものでない設定の中で、浮かびあがるこの笑いはいったいなんなのか。
自身への疑問も抱きつつ、この不可思議な世界にのめり込みました。

読む人の人間性をも試すような、挑戦的な内容。
あなた自身の、モラルとか、常識とか、そんなのの臨界点が問われます。



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