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『燃えよ剣』~土方歳三の生き方、死にかた~

燃えよ剣燃えよ剣
(1998/09)
司馬 遼太郎

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点と点が結ばれていく


(「BOOK」データベースより)
武州多摩の田舎剣士、近藤勇、土方歳三とその仲間が、清河八郎の率いる幕府徴募の浪士組にまじって京へ上ったのが文久三(一八六三)年の二月。曲折を経て、同じ尊皇攘夷であった志士たちが倒幕へ傾いてゆく時勢のなかで、ひとり近藤、土方の新選組は佐幕の道をつき進み、京都守護の会津藩の先兵となって、池田屋襲撃などを決行し、長州藩、土佐藩ほかの憎悪の的になっていった…。―その新選組を創り上げた土方歳三は、最後まではげしく時流に抵抗し、滅びゆく幕府に殉じた。稀代の漢の生涯を巧みな物語展開で描いた傑作長篇小説。



●鬼の副長

新撰組副長、土方歳三の生涯を描いた傑作。
幕末において、彼が何をなそうとしたのかがわかる。

数年ぐらい前から、歴女というのが話題になっています。
いわゆる歴史好きの女性たち。
戦国武将にあこがれたり、様々な土地を訪ねて歴史への興味を深めるのはいいことです。

そんな彼女たちに人気があるのが、伊達政宗と土方歳三(っとテレビか何かで見ました…)
伊達政宗は、近年のゲームやアニメなどでカッコイイキャラとして描かれ、その影響もあり女性ファンも多いよう。
一方、土方歳三のほうは、実際の写真が残っており、現代人からみてもなかなかハンサム。歴女に好感を得られるのもわかる気がします。

●なんのために切るのか

私は、今までドラマや映画、アニメ、漫画などから、頭の中になんとなくの土方歳三像というものがありました。
クールで、掟に厳しく、剣の達人で…などなど。
どこで生まれ、京都でどう活躍し、北海道のどこで死んだかなどの知識もありました。

しかし私の中にある知識は点と点のみで、結ばれておらず、それによって土方歳三像というものを朧気にしか捉えられていませんでした。

こうして、司馬遼太郎の史実に忠実に描かれた小説を読むとそれらがつながったような気がします。
そこに至る理由と結果。特に、理由を知ることで、土方歳三の人となりが大分わかりました。

今まで見聞きしてきた土方歳三とは、一味違う、生の姿に最も近いであろう土方歳三像。
クールというよりも戦国武将のような、狡猾さや野心、智謀にたけた、ある種の荒々しさ。
冷徹さと、火のような気魄のアンビバレンスさを持ち合わせる、新撰組副長。

この、幕末という時代の流れに、刀の力で逆らい続けた男の姿は、結末はどうであれ、今も人の心を熱くさせます。


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『坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)』~日露戦争終決へ~

坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)
(1999/02)
司馬 遼太郎

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本日天気晴朗ナレドモ浪高シ

本日天気晴朗ナレドモ浪高シ―明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の濛気の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が今切られようとしている。感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収む。(「BOOK」データベースより)


●いよいよ最終巻

坂の上の雲 第8巻
いよいよ最終巻。日露戦争最大の山場、バルチック艦隊との決戦です。

日本の命運をかけた戦い。
ここでロシア側を一艦でも逃せば、日本海の航海に支障が出て、確実に日本側が敗北の道を歩まなかればならなくなる、大事な一戦。

歴史の授業などで、勝敗の結果は知っていても、やはり細部の様子を読んでいると、ドキドキがとまりません。
飛び交う銃砲、火炎、水しぶき。
それらの描写が続き、ロシア艦が一隻、また一隻と沈んでいく度に、この戦争が終決へと近づいていきます。

まだ明治維新が起きてから、そうは経っていない時期。
ほんの数十年前までは、ちょんまげを結い、腰に刀をさしていた日本人が、近代兵器によって大国ロシアから勝利を収めようとしている。

歴史に”もし”というものはありませんが、仮にこの戦争で負けていたならば、今の日本も、東アジアもまったく別の形になっていたに違いありません。
”今”を形作った重要な歴史の一頁。
学校の授業では知ることのできなかったその情景を知ることができ、改めてこの本を読んで良かったと思いました。

●日露戦争終結後の悲劇も


この巻でやりきれない気持ちになったことが一つ。
日本海海戦での戦死者よりも、その後に起こった戦艦三笠での謎の事故により亡くなった方のほうが多いということです。

日露戦争集結直後の1905年、三笠は佐世保港内で謎の爆発事故を起こして沈没します。
東郷平八郎や秋山真之は上陸中だったため怪我はありませんでしたが、この時に339名の方が亡くなりました。

戦争という死地からようやく開放されようかという矢先の事故。
こういう悲劇があったということも、教科書には載っていなかったように思います。

●学ぶことの多い小説

全八巻。
長かったようで短かった『坂の上の雲』。
どの巻もそれぞれ考えさせられる部分、感銘をうける部分が多々あり、飽きることなく読み進められました。

今の日本を作った先人たち。今の日本人が持っていないものを持っている先人たち。
先人から学ぶことの多さを改めて痛感させられる、そんな小説でした。
もう少し、自分の年齢が経たとき、また読み返してみようと思います。


●1巻へ

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坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)
(1999/02)
司馬 遼太郎

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陸戦から海戦へ


各地の会戦できわどい勝利を得はしたものの、日本の戦闘能力は目にみえて衰えていった。補充すべき兵は底をついている。そのとぼしい兵力をかき集めて、ロシア軍が腰をすえる奉天を包囲撃滅しようと、日本軍は捨て身の大攻勢に転じた。だが、果然、逆襲されて日本軍は処々で寸断され、時には敗走するという苦況に陥った。(「BOOK」データベースより)


●危うい

坂の上の雲、第7巻
奉天会戦から海戦へ。

陸軍の尽力にあり、奉天会戦ではかろうじて有利と取れる状況にある日本軍。
しかし決着はつかず、日本としては有利なうちに講和へともちこみたい。
それが決まるか否かは、日本海海戦の結果へと託されるのであった…

この奉天会戦は読んでいるだけでどきどきとします。
日本軍は薄氷の上のような状態。
いつ何時瓦解するかわからないような危うい状態。

かろうじて有利な状況に立っているのも、ロシア側の不手際など外的要因によるものが大きい状態。
そして、日本軍には余力が残されていない状況にきています。
もしロシアがあと一歩踏み込んできたら…という状態。

日本の行く末は、日本海海戦に託されることになります。
この海戦の勝敗によって講和にもちこめるかどうかが決まる重要な場面。
主人公の一人、秋山真之がたてた作戦の如何が問われるところにきています。

●いかなる幕引きをするか

今までの巻は、わりと鼓舞させられるような、そんな勢いを感じられる描写が多かったですが、7巻に関してはどちらかというとヒヤヒヤさせられる印象をうけました。
ロシアと日本との国力の差が歴然とではじめている。

引き際、終わらせ方のタイミングによって、かろうじて日本が勝利の形をとれるという重要な場面。
戦争というものが、いかに頭脳戦であるかを感じさせられる章でした。

次巻はいよいよ最終章。日露戦争の勝敗が決します。


●8巻へ


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ひとりの男が、幾万兵もの活躍をした


作戦の転換が効を奏して、旅順は陥落した。だが兵力の消耗は日々深刻であった。北で警鐘が鳴る。満州の野でかろうじて持ちこたえ冬ごもりしている日本軍に対し、凍てつく大地を轟かせ、ロシアの攻勢が始まった。左翼を守備する秋山好古支隊に巨大な圧力がのしかかった。やせ細った防御陣地は蹂躪され、壊滅の危機が迫った。 (「BOOK」データベースより)


●諜報部員にフォーカス

坂の上の雲、第6巻
いよいよロシアの主力バルチック艦隊が向かってきます。

6巻では、おもにバルチック艦隊の動きや、秋山好古の騎兵隊、陸軍の北進などを中心としたもの。
最終局面に向かい、日露双方の思惑や戦略が火花を散らす巻でもあります。

戦争の場面では、武器や肉弾戦で血潮にまみれて戦う前線の場面が多く描かれていました。
大本営、司令、将軍、将校、士官、一兵卒…すべてがロシアと面と向かって戦ってきたことになります。

一方で、この巻では特異な働きをした明石元二郎という男にふれられています。
彼は、諜報部員としてロシアの革命因子を煽動し、内乱によってロシアの弱体化をはかるという重要な役目を果たした人物。
彼一人の行なったことは、兵数十万に相当するとも言われました。

決して、目立つ仕事ではないながらも、日露戦争の勝利に多大なる貢献をした人物。
「戦う」ということを多元的に観ることができなければ、このような成果はあげられなかったはず。
何か物事を行うときに、持たなければいけない重要な視点を示唆してくれています。

明石元二郎のシーンから感銘をうけた言葉。
明石が面識の無い要人と接触しようとして失敗した時のもの。
「釣り場もしらべず、案内人もなしにゆきあたりばったりに針を投げ込んだところで、おもうように魚が寄ってきてくれるはずがない」

様々な日常のシーンに当てはまる、良いたとえだと思います。


●7巻へ


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(1999/02)
司馬 遼太郎

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理屈より行動


松山出身の歌人正岡子規と軍人の秋山好古・真之兄弟の三人を軸に、維新から日露戦争の勝利に至る明治日本を描く大河小説。全八冊(出版社/著者からの内容紹介)


●「集団」というものを考えさせられる

坂の上の雲、第5巻
日露戦争の重要な局面、二0三高地の攻略です。

海軍、大本営の進言に耳を貸さず、二0三高地に決定的な攻撃を加えない乃木希典の軍。
戦死者は続々と増え、日本軍の損害は大きくなるばかり。

その現状を打破したのが、陸軍大将であった児玉源太郎。
彼は、軍の規律を曲げる形で、旅順の乃木軍の元へ向かい、自らが軍の指揮をとることを提言する・・・

情報系統がスムーズにいかないことの弊害を強く感じる巻です。
上層部の混乱によって、どれだけの日本人が死んでいったことか…

「集団」というものが出来る時。もちろん個々の資質も重要ですが、それを効率良く動かすことのできるシステムをきっちりと構築しておくことが何よりも重要なのでしょう。
一部でも乱れることがあれば、それが結果として集団全体の崩壊にもつながりかねません。

乃木軍の行動はその乱れにあたり、そのままでは日本敗北の要因になりかねないところにまで迫ったもの。
ここで、児玉源太郎は無理を通して乃木軍のもとに向かい、それが結果として起死回生の一手となりました。

●時として無理を通す

児玉源太郎の行動も、システムの面から言えばややイレギュラーな行動ですが、それを無理やり押し通すことで開かれるものがある。
時には無茶な行動でも、閉塞感と停滞につつまれた場面では奇手を打たねばならぬ場面がある。

大局的に見たとき、児玉源太郎の行動が問題点を取り除き、システムを効率よく運用する重要なことであったことがわかってきます。

史実から現代の様々な問題との共通点を見つけ出し、その解決策を見出す。
歴史小説などこれまで読んだこともありませんでしたが、この『坂の上の雲』を読むたびにそのことを考えさせられます。


●6巻へ


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