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『暗黒のメルヘン (河出文庫)』~澁澤龍彦が選ぶ悪夢~

暗黒のメルヘン (河出文庫)暗黒のメルヘン (河出文庫)
(1998/07)
澁澤 龍彦

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不安と夢現


●すごく贅沢な、暗黒メルヘン

澁澤龍彦氏が選ぶ、日本を代表する作家たちが描く悪夢の世界。

様々な作家によるオムニバスタイプの諸説には、えてしてハズレのものが多いです。
なんか、数合わせ、ページ合わせでこの作品を載せたんじゃないのか?っというような本にも時々巡り会います。

しかしこの『暗黒のメルヘン』に限ってはそうではありません。
オムニバスながら、一つ一つのクオリティーがものすごく高い。
なにせ、泉鏡花、坂口安吾、江戸川乱歩などなど・・・
怪奇さや、闇をもった小説をかかせたら、右に出るものはいないような人たちばかりで選りすぐられているのですから。

その分、難しい作品もかなり多く、読みづらいのもたしか。
難解な表現、複雑な世界観。。。
正直、すらすら気軽に楽しめるタイプではなく、かなり骨太。
じっくり取り組まねば、なかなかつかみづらい話のほうが多いくらいです。

●あえて、お気に入りを選んでみる

収録作の中で、特に気に入ったもの。
●夢野久作『瓶詰の地獄』
●安部公房『詩人の生涯』
●澁澤龍彦『マドンナの真珠』

『瓶詰の地獄』は人類のタブーに迫った話。話の進め方がなんとも、恐怖感をわきたたせます。
それにしても夢野久作という人のタイトルのネーミングセンスは、あいかわらず秀逸!

『詩人の生涯』は不条理。老婆が糸になって、それでジャケットが作られて・・・
怖さよりも、物悲しさを感じる作品。なんとなくチャップリンのモダンタイムスをイメージ。

『マドンナの真珠』は、なんとなくパイレーツ・オブ・カリビアンをイメージしました。
カリビアン1の呪われた船によく似たシチュエーション。
亡者たちの生者への憧れ、渇望、嫉妬などがぎちぎちと描かれています。
同じ澁澤龍彦でも『狐媚記』よりくだけた感じで、面白かったです。

正直、どの作品も一読しただけではつかみきれない話ばかり。
少しづつ、少しづつ、その世界を味わっていくのが良いかと。
子どもがおとぎ話を読んでもらうように、少しづつ。


関連記事
不可思議なイメージと澁澤龍彦 『胡桃の中の世界』
少女が創る悪夢  『少女地獄 (角川文庫)』
1951年芥川賞受賞  『壁』 

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澁澤龍彦with現代アート 『ホラー・ドラコニア 少女小説集成 狐媚記』

ホラー・ドラコニア 少女小説集成 狐媚記 (平凡社ライブラリー)ホラー・ドラコニア 少女小説集成 狐媚記 (平凡社ライブラリー)
(2012/03/11)
澁澤 龍彦

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不思議な御伽噺


ダキニの呪いが悪霊を呼ぶ!暗黒オカルト小説。現代アートで読む渋沢龍彦第4弾。 (「BOOK」データベースより)


●澁澤龍彦の御伽噺

澁澤龍彦の本をちょくちょく読むのですが、小説は初めてです。
不思議で淫美な狐のお話。

澁澤龍彦と言えば、昭和を代表する…なんなのでしょう。
作家?研究者?いまいち専門が何なのかよくわかりません。
(Wikipediaには小説家、仏文学者、評論家とありました。)
現在でも、SMの語源とされるマルキ・ド・サドを日本に広めた人物として有名です。

澁澤氏の書く本は取り上げる題材が素晴らしい。
毒薬、秘密結社、魔女、エロス、奇人、etc…

怪しく淫美な世界を、これまた怪しさ香る文体で書くので、そういうものが好きな人にはたまらない世界観が構築されています。

●フィクション

澁澤龍彦の小説も、何冊かあるのは知っていたのですが、今まで手をつけることはありませんでした。
評論文的な作品には強く惹きつけられるのですが、小説となると食指が動かない。

私にとって澁澤龍彦の作品は、信じられないような歴史的事実を評論するところに惹きつけられ、澁澤氏自体がフィクションとしての小説を書くのには興味をそそられなかったのだと思います。

何とはなしに、読んでみたこの小説。
話自体は、古典的な狐の妖気伝といった感じです。
ただ、そこに澁澤龍彦的な、淫美さと歴史表現が加わり、少し背徳感を感じるような話でした。
面白いとか、惹きつけられるといった気持ちにはなりませんでしたが、伝わってくる感触は、確かな澁澤龍彦の感触があります。

●現代アートと澁澤龍彦

この本のシリーズは、現代アートとのコラボがもう一つの目玉。
本作では鴻池朋子さんの絵が、表紙や挿絵を彩っています。
(他のシリーズでは、会田誠、山口晃、町田久美など人気現代アーティストの絵が使われています。)

表紙の人間と狐が混じり合う絵。
気持ちの悪さの中に、狐の美的なものも感じます。
灰色の怪しい絵からは、本文に潜む怪奇と狂気の気配さえも。

絵を見ることで、視覚的イメージを。
話の内容とは完全にリンクしきっていないそのイメージ。
それがかえって、お互いのなまめかしさを引き立て合っているようにも感じました。



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