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『不思議な羅針盤』~丁寧な眼差し~

不思議な羅針盤不思議な羅針盤
(2010/12/17)
梨木 香歩

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『西の魔女が死んだ』の作者、梨木香歩さんの随筆集。
以前にも書きましたが、梨木さんのはエッセイというより、随筆といった趣があります。
ニュアンス的なものですが、私はこの本を随筆と呼びたい。

自然のサイクルを生活に取り入れながら生活する梨木さん。
人だけのサイクルでは見えてこないものや、感じ取れない微かなものにまでその眼差しは注がれています。
ひとつひとつが丁寧。
淡く、清らなか日々の営みにしっかりと向き合うその姿勢と文には、背筋が伸びるような、心地よい緊張感が含まれています。

本書の中から、気に入ったところを抜粋

「(フキの下ごしらえについて・・・)アクというものは、常に外に出よう出ようとしているもののようだ。人のうちにある「アク」もきっと、そのようなものなのだろう」

「(フキのアクと人のアクをからめて)「アク」は簡単に爪を染、心を染める。その「アク」の質によっては、一度染まったら二度ともとには戻らない。知らなかった自分に戻れない。」

「明るさや音が強烈であるほど感覚が揺さぶられるわけではない。乱暴に言えば、ハリウッド映画のように刺激が大きければ大きいほど感覚自体は麻痺するし、入ってくる情報が少なければ少ないほど、僅かな差異を認識しようとより感覚の間口は大きく開かれ、感度は高く研ぎ澄まされていく。」

梨木香歩さんの哲学とでももうしましょうか。
自然の摂理、流れと絡めたその視線。
人間本位の生活体系が主流の世の中において、もう一度見つめ直すべきものを投げかけてくれています。


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『春になったら苺を摘みに』~美しい随筆~

春になったら苺を摘みに (新潮文庫)春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
(2006/02/28)
梨木 香歩

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美しいけれど、悲しみもあって・・・

エッセイというと私の中では軽い読み物というイメージがありました。
著者の体験なんかを面白く、またスマートに文章で表したもの。
全般的にすらすらと読みやすいのがエッセイであると。

本書は、すらすらと読めるタイプのエッセイではありません。
どちらかというと、じっくりじっくりと読みすすめていかなければ伝わってこないタイプ。
解説において清水真砂子さんは随筆という言葉で表している。
たしかに、エッセイよりも随筆のほうがしっくりとくるような文章です。

著者のイギリス滞在時における、交遊録がメイン。
下宿の女主人であるウェスト夫人から語られる、生きる上での美しさや厳しさ。
戦争の悲しみ、人種の壁のようなものまで。
さらりとは流すことのできない、人と人とが生きていく上で噛み締めなければならない様々なことが丁寧に描かれている感じ。
でもけして重くはなりすぎない。
このウェスト夫人とイギリスの生活風景、人の優しさなどと合わさり、あくあまで上品な随筆と仕上がっています。

本書のテーマの一つが、「日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける」であると思います。
現代の様々なことが素早く過ぎ去っていくような時代。
そんな時代にこそ、じっくりと深く考え、生き抜くことが重要視されなければいけないのでは。

これは随筆(エッセイ)ですが、たしかに梨木香歩さんの小説へとつながる空気が漂っています。
梨木さんの作品に感じる、上品さ、静寂、清純さ。それらの空気感。

さっと読み通すのではなく、少しづつ少しづつ、大事に読むことをおすすめする本です。
(小説ではありませんが、カテゴリーは小説欄の「梨木香歩」さんのところへ入れてあります)


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(2006/09)
梨木 香歩

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”自然”に好かれる


これは、つい百年前の物語。庭・池・電燈つき二階屋と、文明の進歩とやらに棹さしかねてる「私」と、狐狸竹の花仔竜小鬼桜鬼人魚等等、四季折々の天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録。(出版社/著者からの内容紹介)


●家に住まう

『西の魔女が死んだ』の作者、梨木香歩さんの描く、夢とも現ともつかない美しい物語です。

短い章が沢山連なって出来ている物語。
最初の章から、「?」っとなるような不思議な世界に入っていきます。

怪異と言えばそうなのですが、それほど怖さは感じられない。
ごくごく、自然な調子で、超自然的な出来事が起こり始めます。

それが、全編においてすごくさらりと描かれていて、それが独特の世界観になっています。
主人公、犬、隣家のおかみさん、和尚さん、この世のならざらる友人、自然に住まう者たち・・・
綺麗に、綺麗に交じり合っては離れていく、いい距離感の関係。

物語の最後の方にでてくる、この世とあっちの世界との朧気な違い。
ほとんど交じり合っている、この物語の世界でもそれがあるからこそ、人が人として成り立っていることがわかります。

今はお盆。
現実世界でも、限りなく境目が曖昧になる季節。
そんな気分で読むと、一層雰囲気が引き立ちました。


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(2001/07)
梨木 香歩

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緑の中で暮らした日。異国の香りのする祖母との思い出。


主人公は少女時代のあるとき、祖母と暮らした時期があった。
祖母は外国人。日本に来て長く、一人で暮らしてる。
祖母の家系は魔女(薬学など民間療法の知識に長けている人)の血筋であり、
自然とふれあい、そこから様々な恵みを得て生活している。
かたくなだった少女時代の主人公が祖母と暮らすことで少しずつ変化が現れる。


”魔女”、”死”というワードでは初見勘違いをおこしてしまう。
(タイトルのイメージからだとファンタジー、特にオズの魔法使いが浮かぶかも。)
重々しい内容なのかな?とおっかなびっくり読んでみると、中に広がるのは
美しい自然の情景とともに、自然に寄り添いながらの生活と少女の成長。
そして、大切な人に何を伝えるかといった温かさがゆるやかに描かれている。

祖母と少女との交流も素敵なのだが、その自然の描写を思い浮かべるとうっとりする。
舞台は日本の自然豊かな場所。そのなかでの外国人の祖母との生活。
西洋式の少し優雅な自然のなかの暮らしが、日本の情景と重なることで不思議な憧れを思い浮かべる。

NHKでやっている、『猫のしっぽ カエルの手』という番組が好きな人は気に入ると思います。
(猫のしっぽカエルの手HP→http://www.nhk.or.jp/venetia/
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