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『黒魔術の手帖 』~黒魔術のリアリティを感じるなら~

黒魔術の手帖 (河出文庫 し 1-5 澁澤龍彦コレクション)黒魔術の手帖 (河出文庫 し 1-5 澁澤龍彦コレクション)
(1983/12)
澁澤 龍彦

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人知を超えた力を得るには

(「BOOK」データベースより)
中世暗黒時代を中心に妖術師や権力者らが繰り広げた黒魔術の数々。カバラ、占星術、タロット、錬金術、サバト、黒ミサ、自然魔法、そして史上名高い幼児殺戮者ジル・ド・レエをめぐる様々なエピソードを紹介した本書は刊行後、世間に強烈なインパクトを与え、三島由紀夫に「殺し屋的ダンディズムの本」と嘆賞された。


●科学以前

前回につづけて、澁澤龍彦氏の本です。
今回は人知を超えた、黒魔術に関するエッセイ。

今ではすっかり、漫画やアニメ、ゲームの中でしかお目にかかれない魔術。
かつて、中世にはその実在を信じ、実行した人が多数いました。

その中でも、特に悪魔の力を借りて、超大なる力を得ようとしたのが黒魔術。
犠牲、生贄、退廃的儀式、etc…
様々な、日常からかけ離れた過程を経てでも、力にすがりつきたいという人間の業に溢れています。

澁澤龍彦氏の本ですから、様々な資料を元に内容を構成しています。
なので、とにかく情報が濃ゆい。そのへんのコンビニなんかで売っている500円ぐらいの魔術本などとは格が違います。

科学が発達していない時代の、強烈な願い。
自分の力ではどうにもできない、しかしなにがなんでもどうにかしたい。
あるものは神に祈り、あるものは超自然的なものにすがる。

しかし、それは肯定的(プラス面)の要素を含んだものに限ります。
人を陥れたい、呪いたいといったような負の側面は、誰に祈るのか。
その対象が当時は悪魔であり、その呪術的側面が体系化していったのが黒魔術です。

●ジル・ド・レエ侯とは

この本でも『異端の肖像』に出てきたジル・ド・レエ侯がさらに詳しく解説されています。
物語「青ひげ」のモデルと言われ、ジャンヌダルクと共闘したこともある英雄ながら、後に子供の大量快楽殺人を行なった人物。

ジル・ド・レエ侯がいかにして、そのような道に落ちていったかということを、黒魔術の側面から解説されています。
他の本では、その行なったことの部分ばかり強調されているので、その背後に何があったかをしることができ、あらためて当時の時代というものの闇の部分が垣間見えました。

黒魔術の手帖』と言っても、実際の魔術の行い方が載っているわけではありません。
(ちょこっとだけのっていましたが)
そのへんはあしからず。


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『異端の肖像 河出文庫』~上流階級の狂気 ~

異端の肖像 河出文庫異端の肖像 河出文庫
(1983/06)
澁澤 龍彦

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金と暇と血


狂気と偽物による幻想の城ノイシュヴァンシュタインを造らせたルドヴィヒ二世。神秘思想を体現した二十世紀の魔術師グルジエフ。数百人ともいわれる幼児虐殺を犯した享楽と残虐のジル・ド・レエ侯。ルイ十六世の処刑を主張した熱狂的革命家サン・ジュスト…。彼らを魅了した魂と幻影とは何だったのか。そして孤独と破滅とは何だったのか。時代に背を向けた異端児達を描くエッセイ。 (「BOOK」データベースより)


●金と権力の果て

澁澤龍彦氏のエッセイ。
今回も変わった人がわんさか出てきました。

この『異端の肖像』に紹介される人物は、みな高い身分の方ばかり。
王様、皇帝、貴族、教祖、etc…
そんな一見恵まれた地位にありながらも、どの方も奇っ怪な行動を残しています。

金と権力がある分、その血なまぐささは段違い。
聖女ジャンヌダルクと一緒に戦いながらも、戦争後狂気に身を沈めていったジル・ド・レエ侯。
短い人生の中で、その地位を暴虐の限りに使った皇帝ヘリオガバルス。
これらなどは、理性というものを疑うような凄惨さに満ちた狂宴を行なっています。

●欲望を具現化するには

他にも、殺戮こそ行わなくとも奇異な生涯を送ったものばかり。
全てにおいて、性と金と夢想によって、その奇怪さが成立しているということです。

金があることによって出現する、奇っ怪な現実。
夢想とその現実の往復でますます屈折していく異端者たち。
現代では存在が許されない、倒錯した現実が描かれています。

なんでこんなことしたんだ?っと疑問に思うことだらけ。
そこに澁澤龍彦氏の解説や見解が入り、そこにでてくる人物たちの悲しみの面などもちょいちょい見えたり。
一面的でなく多面的に見ることができるのが、単なる奇人本と違った良さを持っています。

暗く、グロテスクで、淫美さをたたえた世界。
嫌悪と誘惑が同居する、教科書には無い歴史の裏ページ。


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不可思議なイメージと澁澤龍彦 『胡桃の中の世界』

胡桃の中の世界 (河出文庫)胡桃の中の世界 (河出文庫)
(2007/01/06)
澁澤 龍彦

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古来より、不可思議

石、多面体、螺旋、卵、紋章や時計に怪物…「入れ子」さながら、凝縮されたオブジェの中に現実とは異なるもうひとつの世界を見出そうとする試み。さまざまなイメージ、多彩なエピソードを喚起しつつ、人類の結晶志向の系譜をたどるエッセイ集。著者の一九七〇年代以降の、新しい出発点にもなったイメージの博物誌。 (「BOOK」データベースより)



●イメージの交錯

澁澤龍彦氏が厳選した、世界中に存在する不思議なイメージを集めた本です。

ここでいう不思議なイメージとは何か。
それはたしかに存在はするのだけれど、その深層にさらなる世界が広がっているような、そんなものから紡ぎ出されるイメージ。
それはまだ割られる前の胡桃のような。もしかするとその中には異なる世界、『胡桃の中の世界』が広がっているのかもしれません。

結晶・多面体・卵など、モノとして”有る”のだけれども、その形態は秩序と法則によって成り立ち、古来より神秘の対象となってきました。
人はそこに、様々な空想をおりまぜ、奇妙で不可思議な世界観を作り上げてきた歴史があります。

これらの様々な古来のイメージが、澁澤龍彦氏によってリンクされていき、一つの思想となって立ち現れてきます。
100年単位、千年単位、国などを超えて、それらは人類がもつ普遍的なイメージにせまるようにして体系化されながら、我々の好奇心を刺激していきます。

●埋もれた思想史

本書で語られるようなことは、決して正史、特に教科書の世界史や日本史では絶対にでてこないようなものばかりです。
いわば厚い、硬い殻に覆われてきた、表の人の知らざる世界。それを胡桃にたとえているのは言い得て妙だと思います。
現代では、それらは空想の産物で、一般的な知恵とはかけ離れたようなもの。

しかし、当時の人の中には、それを真剣に研究し、リアリティのあるものとしてイメージしていたのも確かです。
正史の流れからは完全に振り落とされたものばかりですが、たしかに歴史の一部分として存在した思想でもあります。

いわば影の歴史とも言えるような、暗い魅力をたたえたイメージの数々。
暗黒歴史のマエストロ、澁澤龍彦氏の手によって、それらは再び魅惑的な輝きを放ち出します。

人類の思考によって形成されたもう一つの世界。
タイトルにある『胡桃の中の世界』というのも、また一つの人類の思考の一部分なのです。


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渋澤龍彦の美学 『エロスの解剖』
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渋澤龍彦の美学 『エロスの解剖』

エロスの解剖 (河出文庫)エロスの解剖 (河出文庫)
(1990/07)
渋澤 龍彦

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深い文化

ヨーロッパで使用された姦通防止用の奇妙な道具〈貞操帯〉に関するさまざまなエピソードを収集した「女神の帯について」。乳房に関する男性のエロティックな趣味の変化から、男性の〈乳房コンプレックス〉を考察する「乳房について」。ポルノグラフィーについてその豊かな知識を披露する「エロティック図書館めぐり」など16篇を収録した。エロティシズムをめぐるエッセイ集。 (「BOOK」データベースより)


渋澤龍彦氏がエロスについて語ると、これほどまでに深みのある作品が生まれるとは。
正直読みながらドキリとしました。

エロスの解剖とありますが、日本語でいう「エロい」内容とは少し違います。
もっと性の意味合いや楽しみ、文化を突き詰めて、古今東西の例を引き合いに、渋澤龍彦氏の論説が光っています。

本書の中で「エロティック図書館めぐり」という項があります。
欧州のほうでは、昔からそのような書物を図書館は収集していたようです。
しかし、それらの部屋は一般開放されるわけでもなく、「地獄室」だの「秘密室」だのと基本封じられてとのこと。
その中には古今東西の好色文学が収められており、学術的にも大変価値があるそうです。
普通ならば、そのような本を毛嫌いする国ならば焼き捨ててしまわれていそうなものを、厳重に保管してあるというところに、人間の本心の面白さを感じます。

エロティック、エロスに関することは歴史、文化と照らし合わせた上で欠かすことのできない要素です。
日本で言えば、浮世絵の文化などは春画(エロティックな浮世絵)を引き合いに出さなければ語ることはできません。
近代の西洋美術なども、肉体を性的(人間的)なものとしての描写が認められたところに発展のきっかけがあるとも言えます。

誰よりも、文化的なエロスに関して精通していた渋澤龍彦氏が書いた本ですから、その眼差しの鋭さは人間の歴史の内部にまで迫っています。
様々に絡み合うエロスの文化を、渋澤龍彦氏の手によって切り分けられたその文化を、本書で味わうことが出来ます。



関連記事→奇人達の履歴 『妖人奇人館』

迷路のようなことばあそび 『スナーク狩り』

スナーク狩りスナーク狩り
(2007/07)
ルイス キャロル

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一体何のことだかわかりません・・・

ルイス・キャロルのノンセンス叙事詩の傑作。謎のスナークを求めて。 (「BOOK」データベースより)


『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』で有名なルイス・キャロルの書いた叙事詩。

ベルマン、ブーツ、ボンネット・メーカー、バリスター、ブローカー、ビリヤード・マーカー、バンカー、ベイカー、ブッチャー、ビーバー…
”B”の頭文字を持つものたち。彼らはスナークを求めて…


ここ数年間読んだ本の中で、トップクラスに内容のわからない本です。
まず、この本の文体が原文ではことばあそびの形態をとっているということ。
注釈などで説明はあるのですが、残念ながら私にはよくわかりませんでした。

ルイスキャロルの本は子供向きのようで、なかなかディープな大人向き。
まるで、難解奥深なパズルのような言葉の並び。
多くの学者もその真意を探り、いろいろな解釈がでているようです。


まず『スナーク狩り』とありますがスナークとはなんでしょうか。
「スネイク(蛇)」+「シャーク(鮫)」、「スネイル(カタツムリ)」+「シャーク」、「スナール(唸る)」+「バーク(吠える)」その他色々に分解できる合成語であり、スナーク自身に姿はなく、ルイスキャロルが設定する何らかの概念を象徴したもののようです。
実際、スナークの具体的姿はでてこず、よくわからないものとして読者には捉えられます。

よくわからないモノというのはルイス・キャロルの作品にはちょくちょく出てきます。
チェシャ猫やジャバウォックなどのキャラクターもはなんだかつかみどころのない、実体のないようなモノの一つでしょう。
存在があるようで無し。存在が無いようで有り。認識すれば存在するようなへんてこなものたち…

漠然とですが、文章の持つ力の奥深さを感じます。だから一読だけでは表層に触れただけで、その内部に到達することは容易ではありません。



この叙事詩自体を読むのは1時間もかからないと思います。
しかしすっかり味わい尽くすにはそうとうな年月を要しそうです。

じっくりと、じっくりと。一文づつ一文づつ。
頭の中の様々な知識、感性を総動員してどうぞ。
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