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純粋悪とは  『悪の教典』

悪の教典悪の教典
(2011/11)
貴志 祐介

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濁りなき純粋悪

学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー。 (「BOOK」データベースより)



かなり分厚い本ですが、一気に読んでしまいました。
引き込まれる内容ももちろんですが、常軌を逸した存在のキャラクターがなによりこの話を支えています。

データベースにもあるように、ジャンル的にはサイコホラーになります。
ただ、他のサイコものとの大きな差は、一部を除き、犯人の視点で描かれているということです。

犯人の視点で描かれますから、考えること、思うこと、感じることが文章からわかります。
文章からも分かってくることですが、犯人にはほとんど悪意がありません。
何を持って悪意を定義するのかという問題もありますが、すくなくとも殺人というものを”悪いこと”という意識では行わない。殺人も問題を解決するための、沢山ある手段の中の一つでしかないのです。
様々な行動に良心の呵責や後悔といったノイズは無く、純粋ともいえる行動原理。
その点では、純粋悪というものを感じさせられる強烈なキャラクターとして成り立っています。

人が社会生活を送る上で決定的に必要なものを持ち合わせていない犯人。
それは、超常現象の類のホラーを越える、人の心理に迫る恐ろしさの権化として現れます。
(その辺にタイトルの『悪の教典』の真意を感じます)

ある種徹底的な犯人の行動には、ダークヒーロー的なキャラクターの魅力があります。
心を掴む手段にたけ、知識も豊富。人望も熱く、完璧に人を騙す外面も備えており、日常に完璧になじみ生活を送る殺人者。
『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士に近いような純粋悪の魅力が本書の犯人にも垣間見えます。
(これは小説だから楽しめるのであって、実際には存在しないことを望みますが。。。)


本書を読んでいて、以前どこかで読んだことのある雰囲気だなと感じました。
巻末をみると、作者の貴志祐介さんは『黒い家』という本も書かれています。
高校時代、角川ホラー文庫にこっていて、その時読んだ中で『黒い家』はトップクラスに恐ろしさを感じた本でした。
『悪の教典』、『黒い家』どちらも極端なまでに人間性の欠如した犯人たちが、読者を恐怖へと導きます。


本書のようなタイプは、あくまで小説であり、架空の事柄だから面白く読めるもの。
サイコホラーや凶悪な事柄はあくまで小説の世界だけにとどまって欲しいものだと思います。
小説を、小説として楽しめるように。



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