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古典的友情ド根性  『走れメロス』

太宰 治
09 /25 2011
走れメロス (角川文庫)走れメロス (角川文庫)
(2007/06)
太宰 治

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気づいたから、激怒した


妹の婚礼を終えると、村の牧人メロスはシラクスの市めざして走りに走った。約束の三日目の日没までに暴虐の王のもとに戻らねば、自分の代わりに友セリヌンティウスが殺される。メロスは約束を果たすことができるだろうか?日はすでに傾いている。メロスよ、走れ!―身命を懸けた友情の美しさを描いて名高い表題作のほか、「富嶽百景」「駈込み訴え」「東京八景」など、執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作9篇を収録。 (「BOOK」データベースより)


表題の『走れメロス』ほか9篇が収められています。
順番では
・富嶽百景
・懶惰の歌留多
・八十八夜
・畜犬談
・おしゃれ童子
・俗天使
・駆け込み訴え
・老ハイデルベルヒ
・走れメロス
・東京八景 です

走れメロスは、昔教科書に載っていた記憶があります。
その時読んで、別段なんとも思わなかったのですが、今読むとメロスの人間臭いキャラクターだったとこに気づかされました。
正義感に燃え、一本気な男メロス。
けれども、信念にブレがあり挫けそうになることも度々。
自分を納得させる言い訳を思い浮かべ、約束を反故しそうになるメロス。
このへんの弱さにこそメロスというキャラクターの魅力があるんじゃないかと思いました。
(完璧な超人的主人公ならば、面白くなかったと思います。)


『富嶽百景』は太宰治の富士山論ともいうべきものが綴られています。
つらつらといろいろな感想や評が述べられていますが、結構いい加減な感じもうけます。
主観に凝り固まりすぎてあんまり富士評としては面白くありませんでしたが、「私は富士を解っている」といったような文章に妙な可笑しみを感じました。

も一つ、面白いなと思ったのが『駆け込み訴え』。
聖書をベースにした、嫉妬や愛憎などの感情をすごく感じる作品です。
シーンごとに起伏する主観者の感情に、メロスの時と同じような人間味の面白さを感じてしましました。



関連記事→穏やかな太宰治 『津軽』
       これぞ腐れ大学生文学 『新釈 走れメロス』
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穏やかな太宰治 『津軽』

太宰 治
06 /26 2011
津軽 (新潮文庫)津軽 (新潮文庫)
(2004/06)
太宰 治

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自分への旅

昭和十九年、風土記の執筆依頼を受けた太宰は、三週間にわたって津軽半島を一周した。懐かしい故郷の風土と素朴な人柄、そして旅の最後に訪れた乳母たけとの三十年ぶりの再会…。自己を見つめ直し、宿命の生地、津軽への思いを素直に綴りあげた紀行文。太宰の最高傑作との評価も名高い、感動の一冊。(「BOOK」データベースより)


太宰治と言えば『人間失格』や『斜陽』のような、すこしネガティブなイメージの作品を想像してしまいます。

この『津軽』ではそのような太宰治ではなく、比較的穏やかなる心情の時代の、太宰自身による気持ちを綴っている作品です。

この作品を読んで、対照的なものとして思い浮かぶのが『ヴィヨンの妻』。
新潮文庫では表題の『ヴィヨンの妻』をはじめとして、エッセイ風の作品が幾つかありますが、どれも自己嫌悪とやり場の無い葛藤が感じられます。
玉川上水での事件へと向かう直前の、不安定な心情に思わず、辛さを感じる場面もありました。

一方、この『津軽』では、太宰は旅行を楽しんでいます。
自らに対する卑屈さはありますが、それは自己嫌悪というほどにはなっていません。
過去に対して、懐かしみを感じ、旧友と酒を酌み交わし、自らが育った場所の風土にふれ、そして自分というものを見つめなおしていきます。

旅の締めくくりとなる、乳母たけとの再開。
そこで、太宰は自分というものが何から影響を受け、そして今に至るのかを理解します。

そこからは、喜びや、何か晴れ晴れしたものが感じられました。


逆に、太宰のネガティブな部分が形成された理由も見受けられます。
もともと、裕福な家の生まれの太宰治。お手伝いさんや、乳母などがいることからも、旧家のおぼっちゃまなのでしょう。
東北地方の旧家における封建的な家柄。その家柄になんとなく違和感を感じつつも、その曖昧さを突き放すことも飲み込むこともできず、ただ漠然としたプレッシャーを感じ続けた幼年時代。
家族の中で、自分だけは裕福な家柄の性質に合わない何かがあることを感じ、それを気にしながら成長していきました。

旅の締めくくりの、喜びの部分の側面には、そのネガティブな部分の輪郭を強く表すことにもなったのではと思います。

図書館男子

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