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淡く綺麗な思い出の世界 『銀の匙』

中 勘助
09 /15 2011
銀の匙 (岩波文庫)銀の匙 (岩波文庫)
(1999/05/17)
中 勘助

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やさしい、味わい。

なかなか開かなかった古い茶箪笥の抽匣から見つけた銀の匙。伯母さんの限りない愛情に包まれて過ごした少年時代の思い出を、中勘助(一八八五‐一九六五)が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が素直に描きだされている。(「BOOK」データベースより)


私がこの本に興味をもったきっかけは、名門灘高校の国語教諭だった橋本武氏がこの本を使ってユニークな授業を行なっていたというニュースを見たからでした。
橋本氏は、この『銀の匙』一冊だけで、三年間の国語の授業を通したそうです。
徹底的に読み込むことで、物語への理解力と解釈を掘り下げる授業を行い、東大の総長になった人物をはじめ、数々の著名人を世に送り出してきました。


『銀の匙』は著者、中勘助氏の自伝風な作品で成り立っています。
病弱で、甘えん坊人見知りだった幼少期から、青春の芽生えのようなところまでの、いわゆる少年期を描いています。

幼少期の主人公が感じる、素直な気持ち。世界に対する、不思議や疑問、喜びや憤りが素直な文章で表現されています。
淡々と、自然な時間の流れに沿うように、心地よい流れが作品全体に漂っており、読んでいるとなんともいえない心地よさに浸れました。
優しい文体や懐かしさを感じる風景。成長と共にある、新鮮な出会いの数々。
そこには、誰しもが体験してきたであろう、普遍的に近いものがあるような気がします。


作品中に、刺激的な個所はなく、あくまでも淡々。
かえって、淡々とした文章がやさしく体に染み込んでいくようです。

なんだか、美味しいお吸い物を飲んだあとのような、ほぅっとした気持ちになれた本でした。



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