スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

人、ねずみ、人間  『アルジャーノンに花束を』

アルジャーノンに花束をアルジャーノンに花束を
(1989/04)
ダニエル キイス、小尾 芙佐 他

商品詳細を見る


花束を送るだけの愛を

32歳になっても、幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードンの人生は、罵詈雑言と嘲笑に満ちていた。昼間はパン屋でこき使われ、夜は精薄者センターで頭の痛くなる勉強の毎日。そんなある日、彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が、頭をよくしてくれるというのだ。願ってもないこの申し出に飛びついたチャーリイを待っていた連日の苛酷な検査。検査の競争相手は、アルジャーノンと呼ばれる白ネズミだ。脳外科手術で超知能をもつようになったアルジャーノンに、チャーリイは奇妙な親近感を抱きはじめる。やがて、脳外科手術を受けたチャーリイに新しい世界が開かれた。だが、その世界は、何も知らなかった以前の状態より決してすばらしいとは言えなかった。今や超知能をもつ天才に変貌したチャーリイにも解決しがたいさまざまな問題が待ちうけていたのだ。友情と愛情、悲しみと憎しみ、性、科学とヒューマニズム、人生の哀歓を、繊細な感性で描きだす感動の1966年度ネビュラ賞長篇部門受賞作。 (「BOOK」データベースより)


主人公のチャーリィに対しなんともいいようのない悲しさといとおしさを感じました。
彼は、手術前ひたすら知識に憧れていました。
32歳になっても幼児ほどの知能しかもたないチャーリィは、知能さえ持てば自分の人生は豊かになると信じています。
手術後、めきめきと知能が高まり様々なことが分かるようになって新しい世界が開けた感動を味わいます。
しかしそれは一時のもので、高くなりすぎた知能は彼の日常にマイナスに作用し始めます。


チャーリィ視点で描かれている文章は、手術前と手術後を境にがらりと変わります。
無邪気さは知能と共に失われ、様々なことに気がいくようになります。
知能の高まりは良くも悪くも”知る”ということを得ること。
いままでは、周りの人間を好意的に見ていました、他人が自分をどう見ているかを”知る”ことにより好意は疑心へと変わっていきます。

チャーリィは急激に得た知識の代償に、人間性が失われていきます。
経験を伴わず、知識だけが高くなったチャーリィが行き着いたのはアンバランスな人間性でした。


最初、あれほど純粋に知能に憧れたチャーリィが、結果得られた知能は苦しみの種となります。
まわりの人間に馬鹿にされてきた彼にとって、知能の高さは幸せの価値基準の指標でした。
高い知能を得た彼は、周りは自分のことを所詮モルモットとしてしか見ていないと感じ始めます。
「誰も自分を人間として見てくれない。自分はねずみのアルジャーノンと同じ実験体としてしか見られていないのだ。」
そんな彼の心情は、幸せとは言い難かったと思います。



なんだか人生のいろんな部分にひっかかる小説です。
心地よさよりも、若干痛みのほうが多い、ちょっと悲しみの残る読後でした。
でも、その痛みは無視してはいけない痛みであり、小説の深みにもつながっていると言えます。
じんじんとした心をもって最後のページを閉じる時には、色々なことを考えている自分に気づきます。
スポンサーサイト
プロフィール

Author:図書館男子
図書館好きの管理人が、様々なジャンルの本を紹介しています。特にお気に入りなのは、江戸、落語、アート、デザイン系の本。相互リンク随時募集中!

検索フォーム
カテゴリ
未分類 (0)
実用書 (71)
デザイン (38)
アート (32)
漫画 (28)
新書 (22)
文庫 (8)
江戸 (13)
落語 (20)
サブカル (10)
幻想的 (9)
ドキュメント (7)
学術 (9)
雑誌 (6)
ライフ (28)
小説 あ行 (16)
アガサ クリスティー (1)
安部 公房 (1)
芥川 龍之介 (1)
有川 浩 (2)
池上 永一 (1)
五木 寛之 (1)
伊坂 幸太郎 (3)
ウィリアム・サマセット モーム (1)
ウィンストン グルーム (1)
江戸川 乱歩 (2)
遠藤 周作 (1)
押井 守 (1)
小説 か行 (4)
カミュ (1)
川村 元気 (1)
貴志 祐介 (1)
ケストナー (1)
小説 さ行 (23)
桜庭 一樹 (1)
佐藤 多佳子 (1)
サン=テグジュペリ (1)
J. R. R. トールキン (1)
J.D. サリンジャー (1)
J‐P・サルトル (1)
志賀 直哉 (1)
C.W. ニコル (1)
司馬 遼太郎 (9)
澁澤 龍彦 (2)
ジャンニ ロダーリ (1)
ジュール・ヴェルヌ (2)
ジョン スタインベック (1)
小説 た行 (14)
ダニエル キイス (1)
太宰 治 (2)
谷崎 潤一郎 (3)
チャールズ ディケンズ (1)
筒井 康隆 (1)
恒川 光太郎 (1)
トーベ・ヤンソン (1)
ドストエフスキー (2)
トマス・H・クック (1)
トルーマン カポーティ (1)
小説 な行 (10)
中 勘助 (1)
梨木 香歩 (4)
夏目 漱石 (2)
南條 範夫 (1)
西尾 維新 (1)
日本児童文芸家協会 (1)
小説 は行 (9)
坂東 真砂子 (1)
ピエール・シニアック (1)
東野 圭吾 (2)
ヘッセ (1)
ヘミングウェイ (1)
星 新一 (2)
堀口 順子 (1)
小説 ま行 (38)
万城目 学 (6)
松岡 圭祐 (1)
三浦 しをん (6)
三島 由紀夫 (1)
三津田 信三 (1)
ミヒャエル・エンデ (1)
宮木 あや子 (1)
村上 春樹 (8)
村上 龍 (1)
森見 登美彦 (12)
小説 や行 (6)
八木沢 里志 (1)
柳 美里 (1)
夢野 久作 (2)
山田 風太郎 (1)
よしもと ばなな (1)
小説 ら行 (2)
リチャード・バック (1)
ロアルド・ダール (1)
小説 わ行 (2)
和田 竜 (2)
取得物@動画など (13)
図書館 (19)
雑記 (22)
購入日 (7)
J. K. ローリング (1)
柳広司 (1)
冲方 丁 (1)
坂木 司 (1)
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
Twitter
tosyokandanshiをフォローしましょう
カウンター
最新トラックバック
フリーエリア
図書館男子さんの読書メーター
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。