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北欧の重苦しさ 『誠実な詐欺師』

トーベ・ヤンソン
05 /29 2011
誠実な詐欺師 (ちくま文庫)誠実な詐欺師 (ちくま文庫)
(2006/07)
トーベ・ヤンソン、冨原眞弓 他

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混色は美しいとは限らない


雪に埋もれた海辺に佇む「兎屋敷」と、そこに住む、ヤンソン自身を思わせる老女性画家。彼女に対し、従順な犬をつれた風変わりなひとりの娘がめぐらす長いたくらみ。しかし、その「誠実な詐欺」は、思惑とは違う結果を生み…。ポスト・ムーミンの作品の中でもNo.1の傑作として名高い長編が、徹底的な改訳により、あざやかに新登場。(「BOOK」データベースより)


ムーミンシリーズで有名なトーベ・ヤンソンさんの晩年の作品です。

『誠実な詐欺師』というタイトル。なんとも不思議。
わりとありふれた言葉と言葉をたしただけなのに、そこから様々なものが想起させられます。

ムーミンでは子供が様々なイマジネーションを膨らませ、無邪気な精神がどこまで広がる世界でした。
主人公から、登場人物まで癖の強い個性を持ちながらも、ムーミン谷でのキャラクター達の関係は円満に描かれているように感じます。

この、『誠実な詐欺師』でも癖の強い個性を持った人間たちが主人公です。
裕福な家庭の生まれで、お金に無頓着。だれをも信頼し、疑うこの知らない女性画家「アンナ」。
計算が得意で数字に敏感。ひどく無愛想で、人の欺瞞に対して鼻がきく若い女性「カトリ」。

二人とも心根は優しいということは共通しています。
しかし、育ってきた環境、考え方、価値観などがまるで違う二人。
あることがきっかけで、二人とカトリの弟、犬と共に一緒に暮らすことになります。


カトリがアンナに歩み寄ろうとした時から何かが狂い始めます。

カトリとアンナは色で言えば補色関係にあるようなもの。
(補色とは対比する関係の色で、並べればお互いを引き立てあう色のこと。)
仕事の面ではお互いをうまく引き立てることはできました。
(お金に無頓着なアンナに対して計算の得意なカトリ。お金を儲ける手段をもたないカトリに対してそれがあるアンナ)

しかし補色関係にある色は混じり合うと、くすんで濁った灰色のような色になってしまいます。
カトリとアンナに対しても同じで、歩み寄りによってお互いの良さが徐々に崩れていきました。
お互いに鮮やかだった個性の部分がグレーな良かった部分を濁らせる結果になってしまいます。


「誠実」と「詐欺師」という言葉もあるいみ対極に位置する言葉かもしれません。
曖昧さをもたない対極に位置するモノ達の歩み寄りは、不純を持った曖昧さを生じさせるだけなのかもしれません。

だからといって歩み寄らなければいいというわけではありません。
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