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『文鳥・夢十夜 (新潮文庫)』~明治の時代性に思いをはせてみる~

夏目 漱石
04 /23 2013
文鳥・夢十夜 (新潮文庫)文鳥・夢十夜 (新潮文庫)
(2002/09)
夏目 漱石

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随筆であり、短編小説であり、そして小品であり。
たんたんと重ねられていく文章。
短い中に凝縮された、夏目漱石の時代性が感じられます。

数ページほどの様々な話で構成されている本書です。
書かれたのは明治期。
読んでいる私はもちろん平成の現代に生きる者ですが、この文章を読んだ当時の人にはどう映ったのだろうかと思いを巡らせます。

なんともモダンな文章。内容は精神的なこと、西洋への留学のこと、哲学的なこと、日常的なこと。
留学の話や哲学の話は、当時の人にとってはどう映ったのでしょうか。
まだまだ海外が未知の世界の時代のはず。たいそうインテリジェンスな読み物だったのではないでしょうか。
当時はどのような階層の人が本書を読んでいたのか。知識人か、学生か。もしくは庶民のおかみさんのような方までも読んでいたのだろうか。
そういう時代性のようなものを考えながら読むと、なかなかに面白いものがありました。

明治の生活描写、特に夏目漱石の闘病中の描写。
何を食べ、何を娯楽とし、また治療に至ってはどのようなことが施されていたのか。
今とは全く違ったそれらの生活風景に目新しさも感じました。

観察ということ。
表題の「文鳥」という作品を見ても、夏目漱石の日常に対する観察の鋭さのようなものが感じられます。
ただ見るのではなく、深く深く分解するかの如く、観察する。
何気ない日々の営みを、文学的高みにまで抽出するその観察眼には、夏目漱石という人の存在の高さがうかがい知れます。


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夏目 漱石

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ユーモアはじめました


猫の視点による、明治の珍妙不可思議な人間達のなんてことない生活を描いた作品。

漱石の作品で、最も有名な作品の一つです。
有名なので面白かろう、読んでみようっと思ってはいたのですが中々とりかかれず。
先日、図書館で「えいっ!」と借りて一週間かけて読みきることができました。

食わず嫌いの読まず嫌いでした。
ユーモア、風刺、少し斜めから世間を見た描写。
登場人物たちは少し世間ずれした人たちばかり。
そんな彼らが、どうでもいいことについて喧々諤々と文章を埋めています。

この小説。どうでもいいことをいかにそれらしくどうでもいいことで表現しているか。
そのどうでもいいことを面白く読ます漱石の文章力たるや素晴らしいです。

たとえば、登場人物に理学者の寒月君なる人物がでてきます。
彼が昔、バイオリンにあこがれて手に入れるまでの話をするのですが実に延々とどうでもいい描写が続きます。
寒月君、夜にバイオリンを買うことを決め、早く夜になれと布団にもぐりこみます。
夜になったかと布団からでるとまだお日様が、、、
庭の干し柿を一つ喰らいまた布団にもぐりこみ
夜になったかと布団からでるとまだお日様が、、、
また干し柿を喰らって布団にもぐりこみ・・・
こんな感じの本筋にさして影響しない描写が大半といっても過言ではありません。

このナンセンスな喜劇にも似た展開が、しみじみとした笑いを誘うのです。
そんな人間達を猫は至極客観的な目線で見つめます。
猫が一番大人な存在であり、人間げに珍妙なりといった感で評し続けます。

人の行動、猫の視線。
とりたててドラマチックでもない平々凡々な日常が、現代まで読み継がれる普遍的な可笑しさをたたえています。
また、その可笑しさの中に、こっそり近代人へ批判も込められています。
世間ずれの登場人物と猫だからえぐりだせる近代文明の毒の部分。
そんなアクセントが全体をきりりとしめていて、最後までだれずに読むことができました。

図書館男子

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