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『グラスホッパー (角川文庫)』~特殊殺し屋達のバトル~

グラスホッパー (角川文庫)グラスホッパー (角川文庫)
(2007/06/23)
伊坂 幸太郎

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今年度から、ちょくちょく読み始めた伊坂幸太郎作品。
三冊目は一風変わった殺し屋達の戦いを描いた作品です。

私が読んだのは旧表紙ですが、画像は現在刊行されているバージョンでしょうか。
小説内にでてくる、三人の殺し屋のイラストです。

伊坂幸太郎の『魔王』を原作にした同名の漫画がありますが、その中にもこの三人がでてきます。
漫画は『魔王』と『グラスホッパー』が混ざっていたのを、今回初めて知りました。

私は漫画を先に読んでいたので、キャラクター達の特徴は大体分かっていましたが、こうやって活字で読むと違った印象。
漫画だと添え物的な扱いだった殺し屋達がここではメイン。
それぞれの性格やバックグラウンドが深く掘り下げられており、三人の特殊さが浮き彫りになった感じ。
ただ、残念なのは三人とも派手なタイプのキャラクターではないので、バトル(バトルといえるのかどうか?)も比較的動きの少ない展開。
それでも、それなりにひねりが効いていて見所はありました。

全体的に面白くはあったのですが、台詞がちょっとくさい。
ここでいうくさいは、演技がくさいとかのくさい。
どうも、名言とか名台詞調にしようとしているのが、気になってしまいました。
(村上春樹作品ではそういう所もすんなり受け入れられたのですが、伊坂幸太郎作品ではどうも気になる)
登場人物によってはもっとさらりとしててもいいんじゃない?って思いますが、そのへんのところも作家の味なのでしょう。(私は『ゴールデンスランバー』のほうが好みです)

小説、『魔王』と『グラスホッパー』を読み終わったら、また『魔王(漫画)』を読みたくなったので、押入れからひっぱりだしたいと思います。


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『ゴールデンスランバー 』~大衆心理を指摘する~

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(2010/11/26)
伊坂 幸太郎

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ビートルズの名曲とともに


●大衆心理と伊坂作品

『魔王』以来の伊坂幸太郎氏、二冊目。
気にはなっていたものの、読まず嫌いみたいな感じでなんとなく敬遠していた作品。

普段あまり本を読まない友人が、「伊坂幸太郎ってイイぜ!」みたいな感じで、熱をあげておりました。
どうも、周りがそんな状態でなおかつ自分が後続となった場合、いまいちとっつきにくくなるようで。
そういうこともあり、伊坂幸太郎作品はあえて読まないようにしてきた節があり、そろそろ手をだしてみようかなって気に最近ようやくなりました。

『魔王』に続いて『ゴールデンスランバー』。
どちらとも、”大衆”という漠然としたものを上手くつかみだしていると思います。
メディアをはじめ、毎日聞こえてくる「民意」とか「普通」とかそういった大衆心理に属するもの。
気にしなければなんてことはないのだけれど、気にしだすとその正体の見えない大きなものに恐怖を覚えます。
ほんとうに、我々の意思は自由意思なのか。なにかの情報操作や場のノリで意志や思想、行動なんて簡単に変わってしまうものではないのか。
伊坂氏の作品はそういう危険性の指摘、抽出が上手いなぁと感じます。
そういう見過ごしがちな当たり前のものへの”気づき”が得られる部分に、熱狂的なファンがつくのかなと分析してみたり。。。

とんでもない状況に身を置くことになる主人公。
ラストの方。いよいよ自分の行く末が決まるという重要な場面で、ふと聞こえてくる新聞配達のバイクの音。
”「今ここで俺が大変な事態に巻き込まれている時にも、新聞配達人は自分の仕事をこなしている。」”

こういう、ちょっとしたところの描き方。
これ一つで、私の主人公への共感度は一気にあがりました。
ここってちょっと哲学的かも。考えさせられるし、近いことはだれもが感じたことがあるはずだし。
ああ、この人もその他大勢の延長線上のはずなのに。。。ちょっとしたきっかけでこうならないとも限らない恐ろしさ。

普遍性とか当たり前を上手く掴んだ作家は強いなぁと感じます。


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魔王 (講談社文庫)魔王 (講談社文庫)
(2008/09/12)
伊坂 幸太郎

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そこに自分の意思はあるのか

「小説の力」を証明する興奮と感動の新文学
不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作(出版社 / 著者からの内容紹介より)


●2年ほど積ん読

私はあまり積ん読(本を読まずに放置すること)しないほうですが、この本は2年間放置していました。
このほど、「えいやっ!!」と決心して読了。
感想は「思っていたより面白かった。」です。

この魔王という作品はコミック化もされています。
小説を買った同時期にそのコミックを読み出したので、なんだか内容を先分かりしてしまったようで、原作を放置していました。

どんな本でもそうですが、原作とそれをもとにしてつくられた作品は全然違いますね。
話の中の登場人物たちは”特殊な能力”持っています。
その部分を、コミックではかなりSF要素が強く描かれていましたが、原作ではわりとあっさり目に描写されていました。

●大衆不安

コミックだとどうしてもその能力部分に目が行きがちだったのが、原作部分では抑え気味だったのでストーリーをより良く味わえた感じです。
不穏な社会、台頭するカリスマ、流される大衆、盲信から生まれる恐怖…
結局、だれが正しいことをしていたのか。世論とは何なのか。
不安定な現代だからこそ考えさせられるテーマがあちこちに見受けられる作品でした。

●読まず嫌いは…

作者は今をときめく人気作家の伊坂幸太郎さん。
遅ればせながら、この『魔王』が私の伊坂作品デビュー。

色んな人から伊坂幸太郎作品の良さは聞いていましたが、そんな評判を聞くと変な天邪鬼が働いて、読んでみようという気分がなかなかおこりませんでした。

そんで、実際読んでみると面白かった。
もっと早くに読んでみればよかった。
本に対する意固地さを持ってると、損するなぁと改めて思う夏の日でした。



こちらがコミック版↓
魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)
(2007/11/16)
大須賀 めぐみ

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極限状態の善悪 『海と毒薬 (角川文庫)』
純粋悪とは  『悪の教典』

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海と毒薬 (角川文庫)海と毒薬 (角川文庫)
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罪の意識とは何か?


腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院の研究生時代、外国人捕虜の生体解剖実験に関わった、忌まわしい過去があった。病院内での権力闘争と戦争を口実に、生きたままの人間を解剖したのだ。この前代未聞の事件を起こした人々の苦悩を淡淡と綴った本書は、あらためて人間の罪責意識を深く、鮮烈に問いかける衝撃の名作である。解説のほか、本書の内容がすぐにわかる「あらすじ」つき。(「BOOK」データベースより)


●裁くのは誰か

戦争と言う極限状態において、人間の善悪はどのようになるか。
『海と毒薬』ではそんなことを考えさせられます。

戦争中におこる、捕虜をつかった生体実験。
人の価値観がぎりぎりの状態まで来ている時、どのような判断を下すか。
そこで、自分の中の善悪ははたして正常に機能するのだろうか。

なんとも薄気味の悪い本でした。
でてくる登場人物すべてが、いろいろなことで追い詰められている。
もちろん、戦争と言う極限状態が要因でもあるのですが、それ以上にそれぞれがそれぞれのごく私的なことで追い詰められている。
利権関係、派閥争い、愛憎のもつれなどなど。

自分の力ではどうにもならない要因と、欲のために自ら引き寄せる要因が不幸に交じり合って、人々の心を蝕んでいきます。
戦争だけとは言い切れない。色々含めての極限状態。

●罪の感情

登場人物の一人が、生体解剖を行った後で罪責観念があまり沸かないことに気づきます。
罪責観念とて感情。
豊かな感情でいられない時代では、彼らにはそれすら過ぎたるものなのかも。

冒頭部分。主人公の勝呂医師の戦後の姿。
豊かな時代なはずなのに、戦中に失った「人としての大切な何か」は戻ってこなかったようです。

鈍い重さを感じるような、そんな読後感でした。


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まことに小さな国が  『坂の上の雲〈1〉』
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『ゾンビ日記』~押井守の戦争観 

ゾンビ日記ゾンビ日記
(2012/06/01)
押井 守

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何か違うゾンビもの


運命の日から数年後、生きている人間を探し求めて東京を彷徨ってきた男は、静かな絶望のなかにいた。男と共存するのは、犬や猫の動物ではなく徘徊するゾンビのみ。人を襲わず、なにも食らわず、何も関心がない。男の他には。“生きている"人間はいなかった。残された食料で生き続ける男は、無為な生活から逃れるように、やがて銃を手にする―――。ゾンビたちが出現した理由は? 運命の日には何が起こったのか? アニメ・映画監督の押井守が描く、新しい小説世界! (内容紹介より)



●細部に宿るなにか

映画版の『うる星やつら』や『攻殻機動隊』などの監督で有名な、押井守さんの描く終末世界。

正直、小説としてはあんまり面白くなかったです。
押井守の映画作品は、細部描写などが売りだと思いますが、それが小説となるとくどい。
作中に銃などがでてくるとウンチクがはじまり、ちょっとついていけない部分があります。

主人公の行動の描写も細かすぎる。
「何をどうして、なにしたか」をそこまで細かく記述しても、たいして劇的な効果もでていない。
押井守の小説を読むのはこれが初めてですが、「餅は餅屋」ってのを強く感じました。

●形が変われば…

これがもし『ゾンビ日記』という小説形態でなく、「押井守の戦争観」などで形式もエッセイや評論本みたいなのであればもっと面白かったかも。
本書の内容の8割方は、押井守の「戦争観」「正義と悪」「生と死」などを多角的に論じたものです。
それだけ見れば、十分面白い作品。
最近『坂の上の雲』を読んでいるので、深く考えさせられる部分も沢山あります。

主人公は、物語の中で毎日ゾンビを殺しています。
そのことを軸に戦争観や死生観が展開するのはなんとなくわかりますが、別になくてもいいっちゃいい。
(『ゾンビ日記』というタイトルもちょっとこじつけの感じ)
いまいち、小説であることの必然性が感じられない不思議な本でした。

んー…、伝えたいことの内容は面白いだけにちょっと残念。。。


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