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『世界から猫が消えたなら』~切なさと温かさ~

世界から猫が消えたなら世界から猫が消えたなら
(2012/10/25)
川村 元気

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本屋大賞2013で8位にランクインした本。
以前記事で読みたいなぁと言っていたら、ひょんなことから手に入りました。

内容は想像していたのと違ったけど、期待していただけの良さがありました。
なんというか、胸にじーんとくる良さ。

最初タ『世界から猫が消えたなら』というタイトルで想像したのは、物事の仮定的な世界を扱った話。
猫が世界から消えたなら、こうなってこうなって最終的にどうなる、といった感じ。

実際は全然違って、のっけから切ない。
死を目前にした主人公と悪魔の囁きから始まって…
絶望的なシチュエーションに立ったとき、どのような行動をとるか。そして何を思うか。
生きることへの選択とその代償。そして代償の価値。

主人公のかなりつらい状況。
文体がひょうひょうとしている分だけ、じんわりじんわりとそれが伝わってきます。
ページを進めるにしたがって胸が締め付けられる感じ。
でも、主人公が残りの日々で気づく生きることの良さとか人との関わりあいとか愛だとか。
死が目前にある状況の中で、見えてくるそれらのものへの感謝や愛おしさなんかがとてもうまく描かれていて、切ないんだけど同時にどんどん胸が温かくなってきました。

すらすらと読める小説です。
難しくはないが、軽いわけではない。でもズーンと重いというわけでもない。
人って何なんだろうとか考えさせられたり。
いろいろなことを考えながら読み進めていくうちに、徐々にのめり込んでいく。
油断していると、泣かされる。

(胸が)締め付けられたり、ほっと緩んだり。
そういう繰り返しを経て、読み終わるとじんわり温かい心持ち。
正直、切ない小説。
でも読み終えたときには優しい心持ちになれる小説でした。

(話の中にでてくる猫がいい味だしています。)


関連記事
雑記『2013年本屋大賞』 感想
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仲間と勇気 『飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)』

飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
(2006/09/07)
ケストナー

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みんな、一緒に成長していく


孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。(「BOOK」データベースより)


●ドイツの学校生活

先日読んだ『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』でも紹介されていた『飛ぶ教室』です。
今回は光文社古典新訳文庫から出ているものを読みました。

読むまではなにかファンタジーかなと思っていました。
「『飛ぶ教室』ってタイトルだから、急に教室が中に浮かんで…そこからファンタジーな世界を旅して…」ってな具合に。
読んでみるとファンタジーではありませんでしたが、とても心あたたまる良いお話でした。

●素敵な友情

話は、クリスマスまじかのドイツの学校を舞台に繰り広げられます。
子供達の友情や、勇気の話。優しさや思いやりの話。彼らを見守る大人たち。
それぞれの関係が素敵に交じり合い、微笑ましい学校生活が繰り広げられます。

題名の『飛ぶ教室』とはジョニー、ウーリ、ゼバスティアン、マルティン、マティアスの五人がクリスマスに披露しようとする劇のタイトル。
この五人が本書で主要な活躍を繰り広げます。

体格も、性格もばらばらな五人。
無茶をやったり、助け合ったりを繰り返しながら、より友情を深めていく五人。
遠くドイツの物語ですが、友情に関することは万国共通する、何か胸が熱くなるものがあります。

●光文社古典新訳文庫版の特徴

『飛ぶ教室』は児童書としてかなり知られているようです。
その分、翻訳などは子供向けに訳されたものが多かったそう。
本書の光文社古典新訳文庫では、原文を良さを活かした、スピード感や軽快さを重視した訳となっているそうです。

宮崎駿さんが推薦した、岩波少年文庫版と見比べてみるのも面白いかもしれません。



関連記事
子どもに必要なものとは 『本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)』
推薦図書に選ばれる理由 『十五少年漂流記 (新潮文庫)』

純粋悪とは  『悪の教典』

悪の教典悪の教典
(2011/11)
貴志 祐介

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濁りなき純粋悪

学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー。 (「BOOK」データベースより)



かなり分厚い本ですが、一気に読んでしまいました。
引き込まれる内容ももちろんですが、常軌を逸した存在のキャラクターがなによりこの話を支えています。

データベースにもあるように、ジャンル的にはサイコホラーになります。
ただ、他のサイコものとの大きな差は、一部を除き、犯人の視点で描かれているということです。

犯人の視点で描かれますから、考えること、思うこと、感じることが文章からわかります。
文章からも分かってくることですが、犯人にはほとんど悪意がありません。
何を持って悪意を定義するのかという問題もありますが、すくなくとも殺人というものを”悪いこと”という意識では行わない。殺人も問題を解決するための、沢山ある手段の中の一つでしかないのです。
様々な行動に良心の呵責や後悔といったノイズは無く、純粋ともいえる行動原理。
その点では、純粋悪というものを感じさせられる強烈なキャラクターとして成り立っています。

人が社会生活を送る上で決定的に必要なものを持ち合わせていない犯人。
それは、超常現象の類のホラーを越える、人の心理に迫る恐ろしさの権化として現れます。
(その辺にタイトルの『悪の教典』の真意を感じます)

ある種徹底的な犯人の行動には、ダークヒーロー的なキャラクターの魅力があります。
心を掴む手段にたけ、知識も豊富。人望も熱く、完璧に人を騙す外面も備えており、日常に完璧になじみ生活を送る殺人者。
『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士に近いような純粋悪の魅力が本書の犯人にも垣間見えます。
(これは小説だから楽しめるのであって、実際には存在しないことを望みますが。。。)


本書を読んでいて、以前どこかで読んだことのある雰囲気だなと感じました。
巻末をみると、作者の貴志祐介さんは『黒い家』という本も書かれています。
高校時代、角川ホラー文庫にこっていて、その時読んだ中で『黒い家』はトップクラスに恐ろしさを感じた本でした。
『悪の教典』、『黒い家』どちらも極端なまでに人間性の欠如した犯人たちが、読者を恐怖へと導きます。


本書のようなタイプは、あくまで小説であり、架空の事柄だから面白く読めるもの。
サイコホラーや凶悪な事柄はあくまで小説の世界だけにとどまって欲しいものだと思います。
小説を、小説として楽しめるように。



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悲しい大人達 傷つく子供達 『ゴールドラッシュ』

不条理なのは誰なのか 『異邦人』

異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)
(1954/09)
カミュ

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他人の確固たる認識 とのずれ


この物語の主人公ムルソーはひょんなことから殺人を犯してしまいました。
彼は裁判を受けるのですが、論点が殺人以外のところに移っていきます。

検事は、殺人の数日前に起こったある出来事を引き合いに出し、そのことを非人間的所行であると言いだします。そしてその出来事と殺人を結びつけムルソーを極悪人であると言い放ちました。
はたして、その出来事は非人間的なことだったのか?ムルソーは極悪人なのか?
そもそも、論点はそこに集約されるべきなのか
不条理の認識を極度に追及したカミュの代表作です。


とにかく、何だか気持ちの悪い読後でした。
主人公の行動に対しての検事の推論。
妄想と自己の定規に照らし合わせ、それが絶対の理であるかのように。
”出来事”について過大解釈が行われ、裁判は進んでいきます。

我々は”出来事”の描写を文章で読むことができます。
その描写に各々のイメージが当てはめられるでしょう。
そして、様々な解釈が存在しますが、事実は一つしかありません。
ここでの事実はムルソーの体験以外には無いのです。

が、人は推論を行い、時としてそこに無い情報を付加して結論を見つけ出そうとすることがあります。
検事の行動はその行き過ぎた例であり、そこに不条理が生じました。

カミュはサルトルと同じ実存主義者だと見なされた時期があったそうです。
(二人は、フランスを代表する同時代の文学者でよく引き合いにだされたようです。)
結局は実存主義者ではなかったようなのですが、異邦人にはなんとなく「嘔吐」で感じた、足場が溶けてしまいそうな、あやふやな感覚を感じました。

なんだかややこしく、はっきりとした確証(この本の要)を得られない読後でしたが、まだなんとなくのもやもやだけはまだあります。
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