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『悶絶スパイラル』~赤裸々、しをん姉さん~

悶絶スパイラル悶絶スパイラル
(2007/12)
三浦 しをん

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三浦しをんさんの赤裸々エッセイ集。
今回も羽仁衣着せぬ(?)感じで、自らの珍日常を語ってくれています。

実際には、わりとありふれた日常なのでしょうけど、そこはやはり文才のある人が書くと違う。

たとえば、我々が何か面白いと思った経験を話すとき、あーだこーだと余計な情報や、鈍いテンポになってしまい、結局自分が感じた面白さの半分ぐらいしか伝えられないのではないでしょうか。

三浦しをんさんの場合、そこを二倍も三倍も増し増しで伝えてくれる感じ。
日常の一コマを、ありのままに、なおかつより面白く伝わるようにという意気込みみたいなものも感じられます。
(お腹壊した話とか、アンダーヘアーから見る加齢観とか、下な話もたくさんでてきます。小説からはなかなか想像のつかない、あけっぴろげ&かなり日常感あふれた三浦しをん節が面白い。)

サービス精神豊富だとしても、なかなかね。。。伝えることって難しいですよ。
どうしても、情けないこととか隠したくなりますしね。
そこを奥深くにしまわずに、「ほれほれ、どうぞ」と見せてくれる。
しかも丁寧にラッピング、ギフトカードまで添えて、より良く(面白く)情けないとほほなことを読者に披露するしせいに、人を楽しませる文学に携わるものの魂みたいなものさえ感じますね(おおげさすぎか?)
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『夢のような幸福 (新潮文庫)』~好きな気持ちの赴くままに~

夢のような幸福 (新潮文庫)夢のような幸福 (新潮文庫)
(2008/02/28)
三浦 しをん

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小説家の書くエッセイを読むと、ギャップに驚かされることがある。

三浦しをんさんのこのエッセイもその類でした。



どちらかと言えば、清楚系で控えめなイメージを勝手に抱いていたのですが、まったく違う爆笑系エッセイ。

小説や漫画をこよなく愛し、自室で一人小芝居なんかもやっちゃう。

映画や小説などを見る度に、でてくる男性陣をカップリングしてしまうBL脳。

うーん、勝手に抱いていたイメージと違ってサバサバ&オタク系な作家さんのようです。逆にそっちのほうが好感持てましたが。



しをんさんの知識量はかなりすごそう。

ひと月で漫画50冊以上読むこともあるとか。

Wikipediaで見たんですが、中学生ぐらいから坂口安吾とか泉鏡花読んでたそう。中々できるこっちゃないですよ(私なんか、未だに良く分からない。。。)

エッセイの随所に漫画や小説の引用が見られ、どれだけ書籍を愛する人生を送っているのかってのがわかります。おそらく、様々な分野に関するデータを仕入れるのが好きなタイプなのでしょう。

だからこそ、様々なシチュエーション(職業とかも含め)の小説を書き分けるだけの基礎力があるんだろうなぁ。



本書の中で、しをんさんはBL(ボーイズラブ)を「少女漫画の延長線上」と位置づけています。結構好きみたい。

前々から気になっていた、しをんさん小説にでてくる唐突な性展開。ストーリー的に無くてもいいんじゃない?って思うことも。

おそらくこういう展開のベースにはBL好きな要素がからんでいるのでしょう(そうした“山場”を入れられずにはいられないんだろうな)。

三浦しをん小説の、構成の秘密を見たような感じがします。



前編通じて、しをんさんはかなりの妄想好きと見ました。

いついかなる時、森羅万象、何かしらの妄想をしてしまう。

私も結構その類ですが、モノヅクリに携わる人にとっては、かなり有益なスキル。これからもばんばん妄想しまくって、良い小説をどしどし発表して欲しいです。

『聖なる怠け者の冒険』~森見作品のゆるさと魅力~

聖なる怠け者の冒険聖なる怠け者の冒険
(2013/05/21)
森見 登美彦

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最近、小説のたぐいは図書館で借りることが多いのですが、これは買っちゃいました。
朝日新聞で連載されているときから気になっていて、いつ出るかいつ出るかと待ち続け。
あまりに待ちすぎて、出たことを知らず、ちょいと遅れての購入となりましたが、うん買ってよかった。

森見登美彦さんおとくいの京都を舞台にした物語。
今回は腐れ大学生こそ出てこないものの、怠けを好む素敵な青年が主人公。
そして、主人公を取り囲む、癖のあるアヤシゲな人々や怪人&神さま。
ゆるゆるとした物語展開が、心地よい脱力感をかもしだしています。

ゆるゆると物語は展開していくものの、とりたててアグレッシブなことが起こるわけでなし。
大きな冒険でなく小さな冒険がのんべんだらりんと続いていって、総合的にそこそこ大きな冒険としてまとまる感じ。
他の森見作品で言えば『四畳半』、『夜は短し』、『有頂天家族』のような京都舞台の脱力阿呆らしい不思議系。
『宵山万華鏡』や『きつねのはなし』のようなシリアスさはないです。(わたしはシリアスじゃない森見作品のほうが好きです。)

なんでしょうか、森見作品のゆるさ。
夏の夕暮れどきのような、だるさとゆるさ。
クソ暑い日中が終わり、やんわりと涼しさが広がって、どこか脱力気味な心地よさがひろがる、、、そんなゆるさ。
『聖なる怠け者の冒険』の中でも季節は夏ですが、やっぱりその季節が一番ゆるさに合うんじゃないかなって思います。
(真冬とかだったらゆるくないですもの。こたつのなかとかはゆるいけど。)

ぽんぽこ仮面なる怪人が出てきます。
彼は一体何者で、何故本書で起こる様々なできごとにまきこまれていくのか。
それがストーリーの大筋の一つでもあるのですが、この怪人のネーミングが良い。
森見登美彦さんのネーミングのセンス、本当に好きです。ゆるい。
なかなかタヌキの怪人に「ぽんぽこ仮面」というベタベタな名前をつけるのには勇気がいるもの。だって主要キャラなので、全編通して「ぽんぽこ仮面」の名が出てくるのですから。
下手に骨のある内容ならば、違和感でも沸き起こりそうなものですが、『聖なる怠け者の冒険』では、それをしっかり受け止めるだけのゆるさを持っています。
他にも天狗ブラン、偽電気ブラン、充実した土曜日、週末探偵、etc・・・素敵なネーミングがいっぱい。
これらのネーミングにあふれた世界に接しているだけで、なんだかゆるい(脱力した)心持ちになれるので、私にとって森見作品は浮世をちょっとだけ忘れる良い息抜きとして役立っています。

世界観や空気感が良い。
正直、ストーリーとしては、大層なことが起こるわけでもないし、とりたてて感動する、驚きがある、ワクワクするといったこともありません。
ただただ、淡々ゆるゆると展開していって、最終的に小さな冒険の積み重ねの結果が待ち構えている構成です。
読み終わったあとに、特に何か胸に残るでもなし。
でも、時間がたつと無性にあの世界に浸りたくなる。。。
なんだか分かりづらいですが、私にとってそういう小説でした。


関連記事
古風でイグサの濃い香り 『四畳半神話大系』
清楚なお嬢さんが主役です。 『夜は短し歩けよ乙女』

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』~自信を持てないジェネレーション~

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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お暑い日が続きます。
連日の猛暑で、読書するのもダレがちですが、日頃の習慣。毎夜、本の世界を楽しんでおります。

しばらく前に話題になった村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。
思ってたよりも早く図書館に入ったので、借りてみました。

ここ最近、ハリーポッターを読み続け、魔法とファンタジーの世界にどっぷり浸かっていたので、この多崎つくるはなかなか重めに感じました。
ハリーが空想ファンタジーで現実を一時忘れられるとすれば多崎つくるは人間の内面に向き合わされながら現実を直視させられる感じでしょうか。

何冊か村上春樹作品を読んできましたが、この本はなんだか小難しい印象を受けます。
ストーリーというよりも、キャラクターたちがなんだか小難しい。
『1Q84』にも似た印象をうけましたが、あれはストーリーが長かったのでまだ受け入れ易かったのですが。
多崎つくるにおいては、そのキャラクターの小難しさ(考え方やセリフまわし)がちょいと気になりました。
今まで読んだ村上春樹作品のキャラクターたちも小難しいっちゃ小難しいのですが、それを感じさせないさらりとした感があった。
それだけに、本作ではそれがなかったのが若干残念でした。

度々、他の村上作品と比較してもうしわけありませんが、本作の主人公はさほど複雑な境遇におかれていません。
(他の作品は、なかなかありえない境遇(シチュエーション、生い立ち)に身を置いていたので)
わりと裕福な身の上で、順風満帆な成長の中での、人間関係によるつまずき。そしてそれに伴う人間形成。
ある意味で、とても普通でリアル。一般的な大人が大なり小なり経験したであろう、見に覚えがあるであろう、そんな生い立ち。
そして、それに伴う、大人になってから抱える、形の掴みづらい劣等感のようなもの、あるいは傷。
それを抱えながら生きている主人公に対し、好き嫌いはあるでしょうが、なんとなく自己投影してしまうのではないでしょうか。

多崎つくるでは学生時代の出来事が、キーとなってきます。
なんだか読んでいるうちに『桐島、部活やめるってよ』にも通じる、ポジショニングやヒエラルキーについて感じさせられたり。。。
本作の中で主人公がいた場所は、安定はしているのだけれども、仲間内から要求されるポジションのようなものがあったり。
安定を保つために、ポジションを期待される。そこから外れると、全てが崩壊する、そんな危うさ。
充実していながらも、気づいたときには息苦しさを感じずにはいられないような、そんな学生時代の居場所。
ちょいと離れて見てみると、いかに柔軟性のないものかと、悲しくなるような関係性の中で、主人公は形成し壊れていきます。

私の場合も、それなりに、自己投影してしまい、面白くない気持ちを抱きつつも、主人公の心持ちにちょいと共感すら覚えました。
そう、面白くないんですよ。ストーリーとかじゃなくて、心持ちの問題。
なんだか、見たくない部分を整理して提供されているような感じもあって。
どちらかといえば、主人公にとって蓋しておきたい事柄が、周りの影響もあって、次々と引っ張り出されてくる。
無視しておくこともできるけど、それには強烈な吸引力がある。蓋を開けてしまったら、もうそれをほうっておくのも気分が悪い。
おそらく、誰にでもそういう部分ってあるんだと思います。真っ向から見据えることができる人もいれば、それが嫌な人もいる。
そういう人にとって、この本は、どこかで面白くない感情を抱かせるモノを持っていると思います。

主人公は、外部的圧力(?)によってそれを見据えることになっていくのですが・・・
この多崎つくるの場合にもどうにもすっきりしない幕切れでした。
他の作品にも言えることですが、最後の一口で喉に魚の骨がつっかえた感じ。
飲み込もうにも飲み込めない。
本作に関しては、微妙な感覚が引っかかって終了。ここで終わりっちゃ終われるんだけど、でも何か。。。
掴めそうでつかめない、もどかしい気持ち悪さ。なんともいえない質感。
そういう部分が村上春樹の味であり、魅力なのでしょう。もちろん好き嫌いはあるでしょうが。


本書の中で気になった言葉。
僕にはたぶん自分というものがないからだよ。これという個性もなければ、鮮やかな色彩もない。こちらから差し出せるものは何ひとつ持ちあわせていない。そのことがずっと昔から僕の抱えていた問題だった。入れ物としてはある程度形をなしているかもしれないけど、その中には内容と呼べるものはろくすっぽない。」

たしかにこういう不安を持つ人もいるでしょう。これに対して、老子の

粘土をこねくって、ひとつの器(うつわ)をつくるんだが、器は、かならず、中がくられて空(うつろ)になっている。この空(うつろ)の部分があってはじめて、器は役に立つ。中がつまっていたら、何の役にも立ちやしない。
(中略)これで分かるように私たちは物が役立つとおもうけれどじつは物の内側の、何もない虚(きょ)のスペースこそ、本当に役に立っているのだ
。(BSジャパンー道~タオ・老子~より転載)」
を思いうかべました。私は空は空なりの魅力や用があると思います。


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『1Q84 BOOK 1』~まずは1から~

『走ることについて語るときに僕の語ること 』~スポーティー村上春樹~

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
(2010/06/10)
村上 春樹

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村上春樹さんがこんなにも体育会系だったとは。
前編これマラソン&トライアスロン。
とにかく走ることで埋め尽くされるよう。
この一冊だけでもフルマラソンの話がどれだけでてくるか。。。

本書はエッセイ形式。
走ることを趣味(生活の一部)にする村上春樹さんが、走りながら何を思い、そして走りに何を見出すかについて語った本。
小説とは違う、著者の人間的魅力が垣間見える本。

とにかくストイック。
10kmほど走ることを日課としているほど、走ることと共にある人生。

走ることで肉体を高めていき、やがてそれは小説へと還元される。
たしかに体力がなければ創作活動って息詰まるもの。
(一部の天才は、死にかけのボロボロのときに名作を生み出すこともあるけれど、あくまで例外)
体力が無いと集中力も持続しないし、、、
やっぱり元気がないと、なにごともうまくいかないのが世の理。

小説家という座業を宿命とした仕事。
そんな中で、いかに自分の肉体管理を行っていくか。
自分の体のコンディションと小説の出来は連携するということを意識して、日々の走りを続ける村上春樹さんはあるいみ職人。
職業意識の高さが伺えます。

いかにして走るようになったのか、また村上春樹文学がどのようにして生まれるようになったかへの言及もあり。
「さすがノーベル賞候補は違うな」と思わされるところもありつつ、非常に人間臭いところもありつつで、全体的なストイックさの中にもおもしろみのある本でした。

私は、仕事柄座りっぱなし&万年運動不足。
日々肩こりや節々の不調を感じつつなかなか日常的運動に踏み込めない弱さがあります。
(最近ちょこっと自宅ヨガをはじめたけれど)
この前読んだ『佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか? 』にも、佐藤可士和さんがウォーキングやジム通いがあることで、仕事の質が高められるとあったし。

やっぱり体が資本だなぁ。
この本読んで一番感じたことは「運動しなきゃ」ってことでした。

(本書は小説ではありませんがカテゴリーは小説「村上春樹」としました。)

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