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『あなたに似た人』~賭けからはじまるブラックな短編~

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))
(1976/04/20)
ロアルド・ダール

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一般人がはまりこむ世界

短篇の一つ一つにちりばめられた恐怖、幻想、怪奇、ユーモア、機智……数多くの奇妙な味の短篇を発表している鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間たちの心の恐ろしさと、人間の想像力の奇怪さをテーマに描いた珠玉の掌篇十五篇を収めた代表的短篇集。一九五三年度アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作!(出版社/著者からの内容紹介)



●異国の黒い風味

以前BULUTUSで紹介されていた本。
日常に潜む、少しブラックな世界を描く短篇集。

前編にわたって、賭けを題材にした話が多いです。
人のちょっとした欲から、ブラックな展開がはじまるといったタイプ。

登場人物の一人ひとり、特に癖があるといったタイプではありません。
どこにでもいる、ありふれた人=あなたに似た人。
自分も、その場にいたら引き込まれるかも…そういった感じの「有りうる」感に少なからず恐怖心がわきたちます。

●さじ加減

どの話にも、きちんとオチが用意されているのですが、それがちょっと物足りない感じ。
ブラックユーモア的な展開で進んでいる割には、シンプルな(予想できうる)オチが多かったのが残念です。
この”ストン”とオチがつく感じも、人によって好きずきでしょう。

日本の小説で言えば、私の知っている限りでは、東野圭吾の「○笑小説」シリーズに近いかも。
日常の中で、とある出来事を支点におかしな方向に進んでいく感じ。
全体を通して、ブラックユーモアに溢れ、笑っていいのか悪いのか、判断の付きづらい面白さ。
『あなたに似た人』も似たような面白さをふくんでいます。

収録されている話の中で、「南から来た男」、「おとなしい凶器」、「偉大なる自動文章製造機」などが、ブラックユーモアがピリリと効いていて良かったです。

マイルドか刺激的か。
マイルドすぎると間延びするし、刺激的すぎるとユーモアにならないし。。。
そのさじ加減がブラックユーモアの難しさであり、読むほうとしての魅力なのかも。


関連記事
東野圭吾のブラックな短篇集 『歪笑小説』
人気推理作家のブラックユーモア 『怪笑小説』

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予想外の急展開 『かもめのジョナサン』

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)
(1977/05)
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超(スーパー)カモメJ

無数のかもめの群れが、われがちに食物のきれはしをついばんでいる。食べるため、生きるためのその騒ぎをよそに、ただ一羽、飛ぶ練習に夢中になっているかもめがいた。ジョナサン・リヴィングストンだ。なによりも飛ぶことが好きだったのである。やがて彼は、つぎつぎと新しい高度の飛行技術を習得していった。群れを追放された一羽のかもめの生き方を通して、自由な精神を貫き、ありのままの自分でいることの大切さを、文章と写真で描き出した名作。 (「BOOK」データベースより)


この本を手にとったときは「きっと動物の生活を描いたのほほんとした小説なのだろう」っと思っていました。

かもめのジョナサンは、当たり前のかもめの生き方に疑問を感じ、ただひたすら飛行に生き方を見出そうとします。
誰にも成し得なかった技術を身に付けたジョナサン。しかし彼は異端として群れから追放されます。
それでも気高く生きていこうとするジョナサンのもとに訪れる者が…

上記の部分まではすんなりと受け入れられましたが、ここから急展開していきます。
かなり思想色の濃い内容になっていき、なかなかついて行きづらい部分もあります。

この小説は70年代のヒッピー文化を中心に流行っていったそうです。
たしかにそんな感じの精神性やら肉体を超越しようとするシーンが多々出てきます。
英雄思想、超人思想、キリスト教的思想、仏教思想、禅の思想、自由とは etc…
情報だけでしか知りませんが、70年代のヒッピーが追い求めていたものはおそらくここに出てくるものだったんだろうと思います。
本書の主人公、ジョナサンはそんな彼らの追い求めた理想を体現したようなキャラクターなのでしょう。

正直、この時代のことをまったく体験していない私からすると理解しがたい部分もあります。
常人を超越してこそ、真の自由は手に入らない的な超人思想。肉体の制約を解放し、精神を解き放つ。
モラルが我々の自由を勝ち得るための障害になる、、、などなど。
なんだかちょっとあやしい臭いも感じられます。
(あとがきの五木寛之さんの文にもでてきますが、イージーライダーのイメージが頭をもたげます)

ただ、この小説には70年代に起こったヒッピーカルチャーをシンボリックに映しだしています。
私にとって、映像などでしかしらない70年代。ラブ&ピースを求めた世界。
過去を知る、道しるべとしてこの小説を楽しむことはできました。


関連記事
膨張と抑圧 『限りなく透明に近いブルー』
「やきもき」に近い感情 『キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)』

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