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奇書の質感 『ドグラ・マグラ (上)(下)』

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
(1976/10)
夢野 久作

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この、世界を構築することの凄まじさ

出版社/著者からの内容紹介
昭和十年一月、書下し自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成する。“日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。


この『ドグラ・マグラ』を読んでみたいと思い続けてはや数年。
ようやっとのことで読了いたしました。

なぜいままで読んでこなかったのか。それはドグラ・マグラのキャッチコピーの奇怪さにあります。
「これを読むものは一度は精神に異常をきたすと伝えられる」
正直こんなことを書かれては恐ろしくてなかなか読めたものではありません。
今回勇気振り絞ってようようのことで読み終えたしだいです。

まずドグラ・マグラが奇怪たるに感じる所以はタイトルの音にあると思います。
「ドグラ・マグラ」という言葉の意味は作中でも正確に意味を成す言葉でないと出てきています。
意味はない言葉なのに、なぜかこみあげる不気味、怪奇さを感じるこの音はなんでしょうか。
わたしはこの「ドグラ・マグラ」に地下に閉じ込められた怪しげな世界をイメージせずにはいられません。
(人の数だけ、独自のイメージが想起させられる音でしょう)


ざっくりとした内容を紹介しますと、舞台は精神病院から始まります。
自分が誰なのかすらの記憶を失っている主人公。
彼はある重大で奇怪な事件の重要参考人であると伝えられます。
彼の記憶こそが、その事件を解決する鍵だと言われますが…
主人公の記憶を蘇らせるため、怪博士は様々な奇妙な資料を読ませます。
(小説の半分以上はその資料や文章、記録を読んでいく構成になっています。)
はたして主人公の頭の中には何が隠されているのか、そして主人公は何者なのか…
(沢山の資料の中の一つに「ドグラ・マグラ」というものがでてきます。
精神病院に収監されている若い患者が書いたとされる物語のタイトルです。)


読み進めるうちに頭がこんがらがるような錯覚を覚えました。
進行している物語の何が正しくて、何が嘘なのか。
ドグラ・マグラの二重三重に折り重ねられた物語が、読者の正常な判断を狂わしていきます。
そして読了時にはなんともすっきりとしない心持ちです。
どのような話だったのか”わかったような気分”がただもやもやと胸に渦巻きます。
(難解なその内容は、一読では把握できないと言われています。)


ドグラ・マグラが出版されたのは昭和10年。
今から70年以上前の作品なのに、その世界観は時間軸を超越したものを感じます。
現実と虚構、正気と狂気の入り交じった構成は現代の書籍でもお目にかかったことがない複雑さを感じます。

過去多くの人々がドグラ・マグラの解釈を試みてきたそうです。
歴史に残る文化人、作家、そして名も残っていない一般人まで…
ドグラ・マグラは数多くの人の頭に疑問と謎を残してきたことでしょう。
同時に、奇異を面白しとする多くの人間を楽しませてきた作品でもあります。


これからドグラ・マグラに触れる人は、己の既成概念を疑って挑戦することをおすすめします。
そして、理解することを望まず書かれている事実をただ目撃していただければと思います。


関連記事→不条理なのは誰なのか 『異邦人』
       不気味なエロス 『人間椅子』  



ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)
(1976/10)
夢野 久作

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