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不可思議なイメージと澁澤龍彦 『胡桃の中の世界』

胡桃の中の世界 (河出文庫)胡桃の中の世界 (河出文庫)
(2007/01/06)
澁澤 龍彦

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古来より、不可思議

石、多面体、螺旋、卵、紋章や時計に怪物…「入れ子」さながら、凝縮されたオブジェの中に現実とは異なるもうひとつの世界を見出そうとする試み。さまざまなイメージ、多彩なエピソードを喚起しつつ、人類の結晶志向の系譜をたどるエッセイ集。著者の一九七〇年代以降の、新しい出発点にもなったイメージの博物誌。 (「BOOK」データベースより)



●イメージの交錯

澁澤龍彦氏が厳選した、世界中に存在する不思議なイメージを集めた本です。

ここでいう不思議なイメージとは何か。
それはたしかに存在はするのだけれど、その深層にさらなる世界が広がっているような、そんなものから紡ぎ出されるイメージ。
それはまだ割られる前の胡桃のような。もしかするとその中には異なる世界、『胡桃の中の世界』が広がっているのかもしれません。

結晶・多面体・卵など、モノとして”有る”のだけれども、その形態は秩序と法則によって成り立ち、古来より神秘の対象となってきました。
人はそこに、様々な空想をおりまぜ、奇妙で不可思議な世界観を作り上げてきた歴史があります。

これらの様々な古来のイメージが、澁澤龍彦氏によってリンクされていき、一つの思想となって立ち現れてきます。
100年単位、千年単位、国などを超えて、それらは人類がもつ普遍的なイメージにせまるようにして体系化されながら、我々の好奇心を刺激していきます。

●埋もれた思想史

本書で語られるようなことは、決して正史、特に教科書の世界史や日本史では絶対にでてこないようなものばかりです。
いわば厚い、硬い殻に覆われてきた、表の人の知らざる世界。それを胡桃にたとえているのは言い得て妙だと思います。
現代では、それらは空想の産物で、一般的な知恵とはかけ離れたようなもの。

しかし、当時の人の中には、それを真剣に研究し、リアリティのあるものとしてイメージしていたのも確かです。
正史の流れからは完全に振り落とされたものばかりですが、たしかに歴史の一部分として存在した思想でもあります。

いわば影の歴史とも言えるような、暗い魅力をたたえたイメージの数々。
暗黒歴史のマエストロ、澁澤龍彦氏の手によって、それらは再び魅惑的な輝きを放ち出します。

人類の思考によって形成されたもう一つの世界。
タイトルにある『胡桃の中の世界』というのも、また一つの人類の思考の一部分なのです。


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