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旅順と乃木希典 『坂の上の雲〈4〉』

坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)
(1999/01)
司馬 遼太郎

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無能な司令部

明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。豊富な兵力を持つ大国に挑んだ、戦費もろくに調達できぬ小国…。少将秋山好古の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。また連合艦隊の参謀・少佐真之も堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。緒戦から予断を許さない状況が現出した。(「BOOK」データベースより)



●旅順という”要”

坂の上の雲第4巻。
終始、旅順攻略の為に日本が苦しみ抜く場面。

旅順を攻め落とすか否かによって勝敗が決まってくると言っても過言ではないほどの重要な場面。
日本総司令部、海軍、陸軍それぞれの思惑が複雑に絡み合いながら戦いが展開されていきます。

この巻では多くの日本人が死んでいきます。
その数、数万人。
上層部の無能によって、いかに悲惨な結末が起こるのかということが辛辣に描かれていきます。

旅順要塞を攻め落とすことしか考えない、乃木希典と参謀の伊地知幸介。
軍本部と海軍は、乃木軍に要塞よりも手薄な203高地を落としてくれと懇願します。
この時、大きな視点で見て作戦上203高地を落とすことがなによりも有効な手段。
それによって陸海軍含めた旅順攻略が進むはずなのです。
しかしそれを受け付けず、乃木と伊地知は強固な旅順要塞進行を行い、いたずらに兵を死なせていきます。

これほど「無能」の二文字が書かれた本はみたことがありません。
司馬遼太郎はよほど乃木希典と伊地知幸介が嫌いなのか。
この巻半分ほどは、二人の過ちによってどれほど悲惨な目に兵士が陥ったかということに費やされています。

今まで、客観的要素を保ちながらの展開でしたが、ここはかなり司馬遼太郎の主観が強くでているのを感じました。
史実としては、確かに二人が有能でないにしても、ここまでページと文章でこき下ろす必要がストーリー上必要か。
乃木と伊地知への描写を通して、司馬遼太郎の人間としての良心や正義観が生々しく出ている場面であると言えるでしょう。

●明治と死生観

日露戦争でも多くの人間が死んでいきます。
はるか異国の地で、大砲や銃に引き裂かれ散っていく命。
この人が死んでいくという事実も教科書などでは教えられません。

明治時代。はるか昔のような出来事。
日露戦争というものは、その時代の人は誰も生きておらず、いまいち現代の私たちからすればリアリティーに欠けるものかもしれません。

しかし、この史実があったからこそ、今の日本が”日本”たりうる。
精密な司馬遼太郎の筆は、生も死も勝ちも負けもひっくるめたリアリティーを描き出します。


●5巻へ


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日清戦争期 『坂の上の雲〈2〉』
日露戦争勃発 『坂の上の雲〈3〉』

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