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『春琴抄 (新潮文庫)』~清純派SM・・・そんな感想~ 

春琴抄 (新潮文庫)春琴抄 (新潮文庫)
(1951/02/02)
谷崎 潤一郎

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永遠に美をとどめるために


「新潮文庫の100冊」収録


●春琴と佐助

古本で買った1冊。
以前読んだ『痴人の愛』が面白かったので、再び谷崎潤一郎チャレンジです。

『痴人の愛』を読んだときにも思ったことですが、谷崎作品はなんとも艶っぽい世界。
エロとは何かが違うんです。
もっとゾクゾクっとくるような感じ。
艶っぽさ、清々しさ、トゲトゲしさ…情愛に絡む感情が、みごとにブレンドされているようなイメージさえ受けます。

この『春琴抄』も性的な表現はほとんど出てこないにも関わらず、一貫して艶っぽさが漂っています。
主人である、盲目の春琴。その付添佐助。
文体は客観的な視点で、二人の生き方が描かれていきます。

加虐的な春琴と、それに追従するマゾヒスティックな佐助。
二人の間には、厳しい主従の線を引きつつも、佐助は一心に春琴に使えます。
ある日、事故によりその美貌を失う春琴。
佐助は春琴の美貌を、頭の中にとどめるため、己の目を潰してしまいます・・・

●それは愛なのか?

この己の目を潰すという行為に、春琴抄の核心的部分を感じます。
そこまでは清純的なマゾヒズム(?)でただただ従うことに喜びを見出していたような佐助。
なのに春琴の容貌が変わったとたんに、目を潰すという極端な行動をとるなんて・・・
サディズムとかマゾヒズムとかそんなのを超越している感じがします。

一番感じたのが、佐助の徹底した美へのエゴイズム。
もはや頭の中で神格化した春琴が、現実でその美を失ったことには耐えられない。
ならば、頭の中の春琴を後生大事にしていこう。
現実の春琴は夢想の中の春琴にリアリティーを持たせる媒介に過ぎない。
そんな感想を抱いてしまうほど、あまりに佐助の行為は、話の流れの中で、極端な性質をおびています。
サディズム、マゾヒズムを超越した先にある、究極のエゴイズムこそが『春琴抄』の本質なのではないかと思いました。

●共感?嫌悪?それ以外?

たぶん、エゴがなければ、容貌が変わった春琴を変わらず愛せたでしょう。
エゴ故に、変わることが認められない、だから目を潰す。
人間の業のようなものさえ感じる凄まじさです。
ぞっとしながらも、文体のなめらかさから、どこか美的な性質をも感じてしまうところに、谷崎潤一郎という人の力量を感じます。

私の感想はこのようなものですが、人によってはぜんぜん違う感じ方をするでしょう。
『春琴抄』は読者の感想が大きくバラける作品だと思います。
多分、その人の恋愛観なんかによって、大きく感想が左右されると思います。
ある人は共感するかもしれないし、ある人は嫌悪するかもしれないし。

自分の価値観を見定める試金石に。


--------------------------------

追伸

ブログを初めて、一年半ほど。
ついにアクセス数が1万ヒットをこえました!
これも、常日頃からみなさまにご愛顧していただいているおかげです。
今後もたくさんの本を読み、書評、感想、本の面白さを表現し続けます。
これからもよりみち図書館をよろしくお願いいたします!


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