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『地域の力とアートエネルギー 』~そこである意味~

地域の力とアートエネルギー (陽セレクション)地域の力とアートエネルギー (陽セレクション)
(1997/01)
橋本 敏子

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いわゆるアート。
美術館で、博物館で、あるいはデパートにおいて。
高い金をかけて、宣伝もたくさん、そして人もたくさん押し寄せる。
そういうアートではない、アートが本書のテーマです。

地域の力とアートエネルギーとはなんぞやというのが最初の感想。
そもそもアートエネルギーという言葉自体がなんかへんです。

ここで紹介されているアートはいわゆる展示型とは違う、プロジェクト的な要素の強いもの。
町を、学校を、特定の場所において、そこでしかできないことをやろうというもの。
しかもアーティスト(作家)単体が作品を制作するのではなく、多くの人のかかわりあいがあってはじめて成立するもの。
一般の人が見ると、「これってアートなのかしら?」と疑問に思うようなものもありますが、アートとはなんぞやと考え直すきっかけがつまっています。

本書で紹介されていたのは、日本各地で行われたアートイベントやプロジェクトの概要を紹介したもの。
それらはいったいどのようなことから始まり、どのような経緯を経て完成へ至ったか。その間に起こった問題、その後の反応までがレポートされています。

いいことばかりじゃないけれど、何かしら変わるし、きっかけとなる。
目に見えない変化かもしれないけれど、それをおこなった町の人たちの心の中のありようが変化して。
そして町が少しづつ少しづつ、動き始める。
アートにはそのような働きかけをする力があります。
そしてそれこそが、題にあるアートエネルギーということなのでしょう。

なにも、美術館や博物館などの都市公共施設にあるものだけがアートではないのです。
世界どこの土地でもアートができ、そしてそれはそこである意味性のようなものが表現されていくはずなのです。
あとは”何を”変えていくか、”何が”変わっていくか。

最初感じたアートエネルギーという言葉への疑問は読後にすこんと腑に落ちっていました。



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『わけいっても、わけいっても、インド』~素朴なアート~

わけいっても、わけいっても、インドわけいっても、わけいっても、インド
(2009/08)
蔵前 仁一

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表紙の鹿のような動物の絵。
不思議な色彩、ボリューム、描き方。
知識とか理論とかすっとばした、力強さのある作品です。

著者の蔵前仁一さんがインドに行って、その地方地方の絵や建築、工芸物を探索するといった内容。
地方地方に昔から伝わってきた、土着のシンプルis素朴な作品群がなんとも心地よいです。

私も、普段から絵をよく描きます。
でもどちらかというと仕事関係の絵であって、作品というよりも、自分の中じゃ製品的な要素が強いかも。
描くのももっぱらパソコンで(基本的にアドビのイラストレーター)鉛筆とかのアナログ画材は、下絵の時しか使いません。
まぁ、そういうのが好きだし、良いのですが、時々めちゃくちゃアナログを欲する時がくるのです。
機械的な線もいいんだけれど、ムラやにじみや、その他人間のぬくもりが感じる絵。
そういうものが、発作的に恋しくなり、また描きたくなる時も。
そういう時に、児童画とか見るとほっとしたりするもんです。

さて、本書に紹介されているインドの作品(アートと工芸の中間をいくような作品群)。
古くから各地で伝えられてきた作品は、とてもアットホームな感じさえする素朴さをたたえています。
自分たちのために、一族、村のためだけに大切に大切に伝えられてきた、純なもの。

でも近年ではそうでもないよう。
旅行客相手への観光用に、お金を稼ぐために、絵を描く人のほうが多いんだとか。
観光客が望むような形で。たとえば自然素材で絵を描く村人というのがでてきましたが、それは観光客がそれを望んでいるから。たぶん自然素材を使っているほうが本物なのだろうと錯覚して高く買ってくれるからだということ。
ニーズに応えるために、素材、モチーフ、デザインがどんどん近代化されていき、古くから伝わる素朴さが失われているようにも感じました。

むろん、この人たちも生きるためにはお金を稼がなきゃならないし、そのためには少しでも売れるものを作るのはわかります。
そういう絵って、昔は生きるためのものではなく、生活を潤わすものだったはず。
それが、生活の糧へと移行することの弊害は、じわじわと将来へのツケとなるんじゃないかなって心配も。

本書にはカラー資料もけっこう掲載されていて、その中で見えたのは、素朴なものとアート的価値がありそうなもの半々でした。
私的には住宅の壁に描かれたような、売るためではない、彩をそえるための、そういったアート未満の素朴さあふれるもののほうがグッとくる。
実際に見てみたい。それら作品が商業臭さに犯される前に。
しかし、インドは遠い、、、



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『表現アートセラピー入門―絵画・粘土・音楽・ドラマ・ダンスなどを通して』~誰もがアートで自分を発見できる~

表現アートセラピー入門―絵画・粘土・音楽・ドラマ・ダンスなどを通して表現アートセラピー入門―絵画・粘土・音楽・ドラマ・ダンスなどを通して
(2005/09)
小野 京子

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私は、地域でアート集団に所属しており、時折作品展やワークショップを開催します。
作品展といっても、私が所属するグループはインスタレーションというジャンルのアート。
空間を使った、その場限りのアートが多いので、モノは残らないけれど参加した人の体験が重視されるタイプ。
ワークショップは主に子供を対象としたものを行っており、子供の自由な創造性をひきだして形にすることをおこなっています。

そういう活動も行っているので、この本も何かの役にたつかなと思って借りてみました。
アートセラピーという言葉は聞いたことがありましたが、表現アートセラピーというのは初めて。
アートの持つ力、特に制作や表現する立場からのエッセンスと心理学が合わさったような感じでした。

たしかに、なにか制作している時、ある瞬間に自分が開かれていく感覚をもつことがあります。
熱中や集中、それを突き詰めて形になっていく過程で、なにか今まで見えなかった自分の内側が見えていく感じ。
表現することに自体に集中すればするほど余計な考えが消えて、それらの感覚が強くなるように思います。

ただ、作品の善し悪しなんかを意識しだすとダメ。
感覚から考えに移行してしまい、自らの価値観とかそういうものとは別の次元の比率が大きくなる感じ。
そうやってできた作品なんかは、どうもピンとこないものが多い気がします。

本書で紹介されていた、様々なアートセラピーに共通するものとして「評価をしないこと」。
他者の評価も無いし、自分自身の評価も出さない。
そこではうまいとか下手とかというものは重要ではなく、いかに無邪気に制作の楽しさを味わえるかということ。
そしてその中から湧き出てきたものからはじめて、自分を再発見するプロセスがとられます。

このプログラムは、精神的な悩みを抱える人から、制作に行き詰まりを感じるプロのアーティスト、その他様々な人々を対象としたもので、どんな人でもかならず得られるものがあるようでした。
アートセラピーというものを体験したことがありませんが、様々なことに役立てられるよう。自分を発見するということは人生において有益なことでしょうし。
こういう自由に表現するプログラムを私も体験してみたいものです。

どうも日本の美術教育では、「上手い」「下手」といういわゆるデッサン力を基準に判断する風潮が強いです。
小学生の図工の時間から始まって、そこで下手とレッテル付けられた子はその後もそういう表現することに距離を置いてしまいます。
保育園児などを見ると、みなお絵かきの時間は描く行為を全身で楽しんでいますが、小学生などになると、そこにうまくしようという色気が生じてしまい、一気にかたくなってしまう。
そういう経過を経て、表現する行為を嫌いになったまま大人になった人にも、こういうアートセラピーを体験することで、表現することの楽しさを実感して欲しいです。

本書を参考にして、こういった表現すること自体の楽しさを、所属するアートグループの活動に活かしていきたいです。
そうした活動をきっかけに、アートや表現することが好きになる子どもや大人が増えることを目標に、頑張って続けていきます。



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『ヘンな日本美術史』~アーティストの視点から愉しむ~

ヘンな日本美術史ヘンな日本美術史
(2012/11/01)
山口 晃

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日本画と現代の要素を匠に組み合わせ、新しい日本の図を提案していく現代アーティスト山口晃氏。
自身の経験と照らし合わせて紹介していく、一風変わった日本美術史の本。

これまで、日本美術史の本で面白いものに当たったことはありませんでした。
問題だと思われることの一つに、これまでの日本美術史をまんべんなく紹介しようとしているところ。
どの本も似たような内容で、その一つひとつの解説は薄っぺらめ。
もう一つの問題は、書いているのが学者だったり、大御所と言われるお爺さんだったりすること。
文書が固く、まどろっこしくて読んでいるうちに嫌になってくることが多いです。

この『ヘンな日本美術史』はこれまで見てきたものとは違い、おおいに愉しめた!
選ばれているものは、山口晃氏の観点から”ヘンだぞ”という基準のもの。
この絵のどういうところがヘンであり、なおかつそれがどう面白いのかなどなどを、丁寧に解説されています。
そして山口晃氏は、今をときめく現役現代アーティスト(変な表現)。
現代的なアートの視点を持ちつつも、自身の絵が日本画の歴史や技術をベースとしているところもあるので、造詣が深い。
とりあげた作品に対する、たしかな知識と自身の考え方の塩梅がとても良く、若干独断すぎる感もありますが考え方がしっかりしていて好感が持てました。

タイトルにも『ヘンな日本美術史』とありますが、一見してヘンなものが収録されているわけではありません。
(めちゃくちゃデフォルメが効いてたり、やたら可愛い日本画ばかりを集めた本もあることはあります。『日本の素朴絵』などは、割とゆるカワイイものばかり収録されていました)
どちらかというと、素人が見ても見過ごしがちなところを、うまくほじくり返して提示してくれている感じ。
そして解説を読んでいくと、なるほどヘンながらも面白い作品だと、すっぽり腹に収まります。

私は日本美術を、西洋美術や現代美術に比べて、どちらかといえば退屈だと思い込んでいました(江戸以降の浮世絵などは除く)。
しかし、この本を読むとちょっと視点が変わって、日本の美術に興味がわいてきました。(「ヘン」ということを主題におくことで、見え方がこんなに変わってくるとは・・・)
あんまり海外との交流がない日本で、どのように日本美術が熟成していったか。
そして現代人とは少し違う価値観によって、構成されている日本画などなど。
そういう歴史やその当時の思想に思いをはせてみると、今後日本美術がもっと愉しめそうです。

本の中で、共感した部分。その一部。
日本美術史の話と直接関係ないけれど。。。引用。
漫画家の方と云うのは逆で、見ないでもすらすら描く事ができます。自分の中に記号的な「型」があるからです。その代わりに、粉本から粉本を移したような、非常に浅い絵になってしまう人も中にはいます(中略)ものを見ないで、イメージの引き写しになってしまうのです。
漫画から漫画を写すのは悪いこととは言いませんが、根本部分がなっていない人をよく見かけます。それは現代の中学生とか高校生の絵やイラスト好きな子にこのタイプが多いです。たまにプロと呼ばれる人の中にもこんな人を見かけますが。。。うむむ、、、漫画やイラストだけでなく、絵が好きならばアートや実際のモチーフを見て描くということの重要性にも気づいて欲しいものです。

(アーティストが書く本って、どこか偏屈味が効いていて、同時に哲学的要素もぽこぽこ潜んでいて好きです。会田誠さんや岡本太郎さんの本にもその要素十分にあり。アーティストにも独特の「ヘン」な視点というものが確かに存在するよう。)

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『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか』~会田誠のアーティスト論~

美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか
(2012/11/09)
会田 誠

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現代アーティスト、会田誠。
現在(2013.2.7)東京は六本木ヒルズ、森美術館にて「会田誠 天才でごめんなさい」開催中(めちゃくちゃ行きたいが、東京は遠い。。。)。

大学時代から、好きなアーティストのひとりです。
描く女性などは綺麗なのですが、モチーフが残酷であったりポップであったり、社会派であったりと縦横無尽。
エロ・グロ・ナンセンス的なものも多いですが、それらがうまく現代的な要素を風刺しているようで。
油絵に、ダンボールを使った立体、映像とその制作ジャンルは多岐にわたり、今最も人気のある現代アーティストの一人と言っていいでしょう。

何冊か、会田誠氏の本も読んだことがありますが、その中でもこれが一番面白かったです。
くだらないことから、アート論まで、幅広く扱っていて、アーティストの視点や思考が垣間見える感じ。
話によっては、ほんとうにくだらないんですが、そこから徐々に現代世相やアートの話になっていくとシビアな感じに。
作品からだけではうかがい知れない、深いこと考えているんだなと結構感心する部分が多かったです。

表題の『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていなのか』は、たくさんある話題のうちの一つ。
エロめいた話かと思いきや、けっこう造形的や美の観点から熱く語っています。
美とかエロとか、視覚的とか感覚的とか、そういったものもひっくるめてアートに立ち向かわないといけない、アーティストの業のようなものさえも。
どこまで真面目で、どこからが冗談なのかその線引きはわかりませんが、観衆にハッタリをかますのもアーティストのお仕事のうちでしょう。

本書の中で「なるほど、会田誠がいうのだからそうだろう。」と思わされて部分を抜粋

「戦後民主主義によって母性と父性が壊れた典型的家庭に育った僕のような者が、強く母性をアピールする豊満な乳房を忌避するのは当然の成り行きだ。それが現在のロリコン国家日本を生んだと外国の美術ジャーナリストに簡単に説明することが僕は多いが、あながち間違っていないと思っている。」

「思うに現代美術への熱量はその社会(国家、都市、地方、企業、etc)の精神的若々しさを測る一つのバロメーターです。」


現代アートだからできること。現代アートにしかできないこと。
その日本の最前線で活躍している会田誠氏だからこそかけることってあるんです。

-------------------------
大学時代に見た、会田誠氏に密着取材した映画『≒会田誠~無気力大陸~』
同じ『≒』シリーズで森山大道氏をテーマにしたものとの二本立てでした。
重厚でシリアスな感じの森山大道氏の後が会田誠氏・・・

いい感じの緩急ついた構成に満足した思い出があります。




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